触媒という言葉をよく聞いたのは就職してからのことだった。ガス事業は石炭ガスを主体とした物だったので、石炭を蒸し焼きにしたときに出るコールタールから幾つも有用な化学物質が入手でき、それを利用した化学産業への進出を計画していたが、その時に必ず出てくるのが触媒のコストが下がらないということだった。触媒で代表的なものは白金で、自分も開発に関わった燐酸形燃料電池も固体高分子形燃料電池も、白金のコストが下がらないのが課題で、これは現在でもその含有量を減らす研究が続けられている。白金を使わない方式の高温燃料電池もあるが、何らかの形の触媒作用を利用している。白金に代わる安価な触媒が見つかれば、化学製品価格は大きく下がるだろう。
その触媒についてまず、アンモニアを低温で合成できる新触媒を東工大が開発し、生産コスト削減を実現させたと報じられている。アンモニアを合成にはこれまで摂氏400度という高温で作動する触媒を使っていたが、摂氏50度未満でもアンモニアを合成できる触媒を開発したということだ。この温度差は合成に必要なエネルギー量を大幅に削減できることになる。アンモニアの合成は触媒を使って窒素分子に電子を与えて原子に分解し、水素原子と結合させるが、研究グループは、水素、カルシウム、貴金属のルテニウムからなる触媒に注目し、この触媒の水素の一部をより結合力の強いフッ素で置き換えると、水素とカルシウムの結合が弱まり、セ氏50度未満でも水素が分離してアンモニアを合成できたというもの。開発した触媒は、高温環境でも性能が高い。セ氏200度以上でも従来の最も高性能な触媒に比べて2倍の効率でアンモニアを合成できるという。今後は触媒の表面積を広げることでさらに合成効率を上げ、5年以内の実用化をめざすとしている。アンモニアは将来水素輸送の媒体にもなると想定されている。
もう一つは、神戸大学 立川貴士准教授らが安価な酸化鉄の触媒を改良し、水から水素を効率よく生産する技術を開発したというもの。太陽光のエネルギーで水を分解して水素を取り出す光触媒は、インジウムやガリウムを含む化合物を使っていたが、高価で実用化が難しかった。研究グループは、ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの触媒微粒子を使った。微粒子同士の接触面を増やし、表面を薄い酸化チタンで覆うなどの工夫をしたことで、太陽光のエネルギーの約7%を水素の生産に使えた。酸化鉄では、これまで約1%しか使えなかったという。今後は粒子をさらに小さくするなどして効率を10%まで高め、25年までに実証試験を始める。水から水素を大量に安く分離できるようになれば、再生可能エネルギー利用の普及が進み、地球温暖化を促すCO2の削減に貢献する。今後は粒子をさらに小さくするなどして効率を10%まで高め、25年までに実証試験を始めるとのこと。
両者共に2025年が一つの区切りになるようだ。どちらも水素が関係しているが、大気中に水素は単体では存在しないために、何らかの方法で、化合物から分離して入手しなければならない。水素が安価に入手できれば、燃料電池での発電単価も安くできる。今後が楽しみだ。
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