効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

アンモニアから水素製造

アンモニアを燃料にすることを調べていたら、昨年、岐阜大学大分大学アンモニアから水素を製造する方法を開発したという情報を知った。これがコストをかけずに、また、大規模なプロセスを利用せずに可能となるならば、再生可能エネルギーからの電力で水を電気分解して得られる水素でアンモニアを製造し、それを遠隔地に届けることが容易に実現できる。前にも書いたが、アンモニアの流通システムは社会に確立しているからだ。
岐阜大学 次世代エネルギー研究センター長の神原信志教授は澤藤電機と共同で、アンモニアを原料とする水素製造装置の開発に成功した。高い純度の水素を製造でき、設備も低コストだという発表を昨年4月に行っている。従来、アンモニアの分解に用いられてきた触媒反応法は、400〜800度の高温にする必要があった。触媒にはルテニウムなどの高価な貴金属を必要とするため、環境負荷とコストが高い。さらに未反応のアンモニアが残留することもあり、劣化につながるため燃料電池には使用しにくいという課題があった。そこで、神原教授は大気圧プラズマを利用して、常温・無触媒でアンモニアから水素を製造する「常温無触媒水素製造法」開発した。これは石英ガラス製の二重筒構造の装置で、外筒に接地電極を巻きつけ、内筒に高電圧電極を差し込んでいる。この中の2〜5mmの隙間にアンモニアガスを流し、一定の波形の電圧を加えて水素と窒素を発生させるという仕組みだ。ただ、触媒反応法と同じく、未反応のアンモニアが残留するという課題が残ったため、澤藤電機と協力し、残留アンモニアを混入させず水素だけを取り出す「プラズマメンブレンリアクター」という装置を新開発した。水素分離膜を溶接した高電圧電極を導入することで、残留アンモニアの混入を防いでいる。そして、純度99.999%の水素製造に成功したという。
大分大学については、アンモニアの触媒への吸着熱を利用することで触媒層を内部から加熱し、室温から水素製造反応を起動させる新しい触媒プロセスの開発に成功したといもので、これも昨年4月に発表されている。アンモニアの分解を開始させるには触媒層を加熱するため、常に外部からの熱供給が必要となり、アンモニアのエネルギーキャリアとしての利便性を大きく損なってきたのを、開発した方式ではこの加熱について、?原料ガス中に酸素を少量加えて発熱反応とする、?触媒へのアンモニアの吸着熱を利用して触媒層を反応開始温度まで内部から瞬時に加熱する、という2つの新しい概念を導入することで、従来型プロセスの弱点を克服し、アンモニア分解反応を室温から起動させ、水素を瞬時に発生させる新しい水素製造プロセスの開発に成功したものだ。
海外でも同じ目的の開発が行われているようだが、これらが実用化されれば、アンモニアと水素の両方を燃料として使えることになる。水素と空気中の窒素を利用してアンモニアを作る技術も開発が進んでいる。今後の展開に期待したい。