日本政府は21日、地球温暖化対策本部(本部長・麻生太郎首相)を開いて、温暖化ガスの国内排出量取引制度の試行内容を決定し、参加企業の募集を始めました。いままで、産業界がコスト増につながるとして後ろ向きだったのが、ここに来て参加意志を表明したものの、その目標がEUのように一定以上のエネルギーを消費している企業には参加を義務づけて、削減目標も強制的に与えられ、達成できない企業への罰金もあるという厳しい枠がはめられているわけではありません。あくまで自主目標なのです。しかし、もし消費者などがこの目標について、甘いとか厳しいとか、判断するような運用がなされれば、それなりの実効はあるかもしれません。
もともと、この排出量取引は大気汚染防止のために米国で企業活動から排出される亜硫酸ガスなどを抑制するために始められ、硫黄分除去のプラント追加コストの方が排出枠を買うよりも安くなる、あるいは、目標よりも大幅に排出量を減らした企業が、目標を達成できなかった企業に余った枠を売って大きな利益を上げるという運用結果となって、硫黄分排出削減に成功した制度を温暖化ガスの排出抑制に当てはめたものです。
欧米ではすでに温暖化ガスの排出枠の国内取引が実施されているのですが、これ以上エネルギー効率を上げて二酸化炭素の排出を引き下げる余地が日本の企業にはないとする産業界の主張に押されて国内取引制度が成立していなかったのです。日本は京都議定書に従って、1990年レベルから見て地球温暖化ガス排出量を6%削減するという目標を受け入れているのですから、国内市場がないというのは片手落ちになります。国連が認めた排出削減量を買って国としての目標を達成することは認められてはいますが、国内での努力が反映される市場がなければ、国際的に非難されかねません。
ただ、大気中の硫黄分を減らすのは一つの国の中で完結するプロジェクトですが、温暖化ガスの削減は地球規模のものとなります。温暖化ガス排出削減量の国際的、国内的取引がどこまで効果的に機能するかはまだよく分かりません。価格動向次第では投機の対象になることも考えられます。英国のように取りあえず国内取引制度を始めて見て、問題が出れば再度見直すという方法しかないのかもしれません。