このところ様々な発電方式が考案されている。今回発表されたのは、空気中の湿度変化を利用して発電を行うことができる「湿度変動電池」。産総研が開発を発表したものだが、空気にさらしておくだけで、昼と夜の湿度差を用いて発電することができるという。
開発した湿度変動電池は、潮解性無機塩水溶液の吸湿作用と、塩分濃度差発電の技術を組み合わせて実現した。これまでにも吸湿する際に電圧を発生する酸化グラフェンなどを利用した発電素子が研究されていたが、これらの素子は内部抵抗が数kΩ以上と高く、mAレベルの電流を取り出すことが難しかったという。
開発した湿度変動電池は、大気に開放された開放槽と密閉された閉鎖槽で構成。2つの槽には水と潮解性を有するリチウム塩からなる電解液が封入されている。この電池が低湿度環境にさらされると、開放槽からは水分が蒸発して濃度が上昇する一方、閉鎖槽は密閉されているため濃度変化は生じない。これによって開放槽と閉鎖槽間で濃度差が生じ、電極間に電圧が発生する仕組みだ。高湿度環境にさらされた場合は、逆に開放槽内の水溶液が空気中の水分を吸収して濃度が減少する。これにより先程とは逆向きの濃度差が発生し、逆向きの電圧が発生する。この過程が繰り返されるのであれば、理論的には半永久的に湿度の変動から電気エネルギーを取り出せるという。
実際に湿度変動電池を作製し、温湿度が制御できる恒温恒湿槽内で2時間ごとに湿度30%と90%を繰り返したところ、湿度30%のときには22~25mV程度、湿度90%のときには-17mV程度の電圧が発生した。電圧が最大となっているときに負荷を接続して出力測定を行ったところ、最大で30μW(3.3μW/cm2)の出力が得られた。この際の短絡電流は5mA(0.56mA/cm2)であり、1mA以上の電流を1時間以上継続して出力することもできた。
また、省電力機器の動作デモとして10μW以下で駆動が可能な低消費電力モーターを作製し、湿度変動電池で駆動させることにも成功した。湿度を20~30%に保った密閉容器に湿度変動電池を入れ、電圧が一定の値になったところでモーターと接続すると、たまったエネルギーによりモーターを2時間半以上回転させることができたという。
発電と蓄電を兼ねたようなもののような印象だが、この技術の応用範囲は広いかも知れない。ノーベル賞級の発明かも知れない。
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