インドのモディ首相が、新型コロナウイルスに向けた政府の対応策に賛同する人は、4月5日の午後9時に電灯・照明を切って意思表示してくれるよう国民に呼びかけたようだ。この方針を発表する前に何らかの検討をしてはいるだろうが、多分電力関係の専門家は加わっていなかったのだろう。午後8時59分から9時9分の間に電力需要が3,200万キロワットダウンする結果となった。開始から9時5分の間には1,600万キロワットダウンし、その後4~5分でさらにその2倍の需要減が起きたようだ。普通ならインド全体が停電する可能性があった需要変動だ。
この発表があることを電力事業は知らされたので、それへの準備として、出力を柔軟に変えやすい水力発電とガス火力発電をフル稼働させ、その分だけ柔軟性がない石炭火力発電所の稼働を絞り込んだのだ。大きな発電所でも一基100万キロワット位だから、その30基分ほどの需要が急落するのだから、その速度に合わせて出力を絞らなければならない。何とか水力とガス火力の出力を絞って対応して、電力の周波数と電圧変動を抑え込み、送電系統から脱落する発電所を出さなかった。そして、その後10分ほどの間に国民は電灯照明のスイッチを一斉に入れたので、今度は需要が急上昇して、全ての発電所がタイミングを合わせながら出力を上げ、周波数と電圧の安全限界以内に抑えることができたそうだ。
日本でも2003年から毎年7月7日をクールアース・デーとして、午後8時から10時まで照明を落とす運動が継続されているが、これもおそらく電力事業にとってはそれによって起こされる需要変動への対応に苦心しているはずだ。インドの場合には10分という短い時間の間にこれだけ大きな需要減と需要増が起きたことになるが、電力関係者は胸をなで下ろしているだろう。報道によれば、9時に水力発電所は2,300万キロワットの稼働をしていたのを、3分内に半分の1,220万キロワットに絞り込み、それにガス火力が追随して出力を絞っている。そして、周波数を40.7~50.26ヘルツ内の変動に制御して電圧を維持したという。周波数変動幅は日本の標準よりはるかに大きくなっている。
制御がうまく行かなければ、インド全域がブラックアウトになる可能性もあった。インドの電力制御技術に拍手を送りたい。
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