これまでに何回も書いているが、固体高分子形燃料電池(PEFC)の中核部分であるセルで水素と酸素を反応させて発電させるのに現時点ではどうしても白金触媒が必要だ。この量は下げる技術開発が進められているが、各国の研究機関でもまだ主要技術開発テーマとなっている。PEFCは現在普及が進む燃料電池自動車に不可欠なものだ。
今日報じられたことだが、日清紡ホールディングスがこの燃料電池車の中核となる発電装置向けの触媒について、貴金属である白金の使用量を3分の1に減らした新素材を開発したようだ。少量でも従来の触媒と同等の機能を発揮する。高額な白金の節約に加えて発電装置も小型化でき、装置自体のコストも10~15%削減できる。日清紡の新素材は2025年の実用化を目指している。触媒の機能を持つ特殊な分子構造の炭素の細かい空洞に、白金の粒子を付着させている。多分炭素繊維技術の応用だろう。現在市販されている燃料電池車は1台当たり30グラム程度の白金を使用するが、日清紡の新素材ならば10グラムで済む。加工費を含む白金の使用コストは従来の30万円から10万円に低減できるという。
日本政府が17年末に策定した「水素基本戦略」では、30年に燃料電池車の販売台数を80万台に増やす目標を掲げている。ただトヨタ自動車の「ミライ」など燃料電池車の国内普及台数は足元で3400台程度。海外を含めても数万台程度にとどまる。トヨタが20年末に発売するミライの新モデルは約740万円するなど、価格の高さが理由の一つとなる。勿論水素充填所の数の少なさもあるが、これは鳥と卵の関係になっている。
日清紡は2017年に小型燃料電池向けなどで白金を使わない触媒の実用化に成功している。ただ一般車に必要な発電性能や耐久性を実現するには時間がかかるとして、並行して白金の使用量を抑えた新素材を開発してきた。もし白金を使わない触媒を実用化できれば、これはノーベル賞を貰ってもおかしくないものとなるだろう。是非成功させてほしいものだ。
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