米国では家庭用太陽光発電(PV)の設置が急伸してきたが、その背景にネットメータリング(NEM)制度があるということは聞いていた。だが、最近入手した資料では、当初の方式が大きく変化していることが説明されている。また、日本やEUのような固定価格買取制度は準備されていない。さらに、電力事業は、それが存在する州政府の規制の対象であるために、このネットメータリング制度の運用内容も州によって大きく異なっている。
太陽光発電のコストがまだ高い1980年代に、最初アリゾナ、マサチューセッツ、続いてミネソタ州に導入された。現在では殆どの州でこの制度が導入されているが、導入当初の方式は、PVからの余剰電力を、供給電力料金単価と同額で積み上げてクレジットにし、月、年単位で支払料金に充当するというものだった。それに加えて、設置には州の補助金も出ていたから、この段階では、日本の固定価格買取制度と似ていたと言える。このクレジットも、1か月単位や1年単位で失効する方式もあるし、失効せずにいつでも料金支払いに充当することのできるものもある。
だが、この制度導入後、急速にPVのコストが下がったために、普及が大きく進み、供給電力料金単価と同額でクレジットにすることが、電力事業者の大きな負担となるようになり、クレジットとなる単価の引き下げが行われていった。また、電力事業者の管轄圏内でのPV普及率に上限を設定して、PVがこれ以上に設置されたときには、設置を制限、あるいは、クレジット単価を極端に下げる方式をとる州も出てきたらしい。その一例はハワイ電力で、新規設置のものについては、系統に余剰電力を逆流させるのを認めない(全部自家消費か蓄電)、あるいは、認めるとしてもほんの雀の涙のようなクレジットしか与えない制度に変更した。同じ方式が、カリフォルニア州の一部でも実施されているらしい。大型のPVを屋根に設置した家庭で、夜の電気消費量が少ない場合、クレジットが余ってしまうこともある。このクレジットが一年で失効するとすれば、使えなかったクレジットは捨てざるを得なくなる。家庭に蓄電池が普及する要因の一つにもなっている。
いま日本で、今年11月から固定価格買取制度の適用期間が終了する家庭が発生しようとしており、その買取について電力事業者の間で条件設定がされようとしている。また、経産省は、固定価格買取制度自体の廃止も検討しているが、何らかの形で普及促進を図る必要もあるから、米国のネットメータリングのような方式を導入しても良いのではないかと思う。そうすれば、固定価格買取制度の買取が、賦課金として料金に反映しなくなるというメリットもあると考えるからだ。
奈良の柿と素麺