2012年の固定価格買い取り制度(FIT)導入以降、九州電力管内では、太陽光が日照条件の良さから急速に普及し、全国の約2割を占めている。しかし、九州電力は今秋、電力消費が大きく下がる週末の天候が晴れの場合、総発電量が総電力需要を上回る可能性がでたために増えた太陽光の電力を抑える「出力制御」に踏み切った。天候次第で年末年始の実施もあり得る。制御対象はいわゆるメガソーラーと言われる規模の大きい設備だが、その固定価格での買い取り条件は、価格が高いものも低い物も混在している。
福岡県みやま市の「みやま高田発電所」(出力は約1864キロワット)の事例では、1日この発電所を止めることで30万円程度の損害になるということだ。この額は買取価格によって差異があるが、損失が起きることはどの設備についても違いはない。新しく規模の大きい設備を設置しようと計画する事業者は減りつつある。金融機関も融資対象としての評価を下げているという。再生可能エネルギーを増やせるのに着手できなくなったことは、環境政策としては問題視されることになる。九電によると、11月末時点で送電網につなぐ太陽光は約826万キロワット。申し込み中の分も含めた太陽光の量は約1500万キロワットと1.8倍に膨らむ。この場合、他の地域に電気を送る「連系線」の活用状況にもよるが、年間発電量の34~65%を制御する計算という。
この障壁を乗り越えようとする技術開発もされつつある。大きな電力を消費する工場などで、発電した太陽光発電からの電力を全て自家消費し、系統に逆流させないようにして認定を受けると、固定価格買取制度からは外れるが、発電停止を要請されることはなくなる。一つには、蓄電池の価格が急落したために、発電量が自家消費量を上回ったときに蓄電する方法がある。さらには、最近開発されたものだが、蓄電池がなくても、発電量を逆潮が起きないように制御する方式も導入されているようだ。
太陽光発電と蓄電池の組み合わせでの発電単価が、工場などが購入する電力単価よりも下回るようになりつつあるため、家庭用も含めた全てのものが、自家消費に切り替わっていくだろう。この場合でも、固定価格買取制度対象のものは制御対象になる。今後この制御方式が変化する可能性も否定できない。また、東北電力や九州電力管内でも太陽光発電の自家消費方式は普及するだろう。
さらには、以前にも述べたことがある需要サイドの管理技術をどの程度九電が本腰を入れて開発実施するかも重要だろう。消費サイドに電気を多く使うように仕向ける方策だ。一見売上が落ちるように見えるが、全体とすれば収益性を高めることになるはずだ。それへの取り組みが見えないのは残念なことだ。
これが日本のエネルギー政策として好ましいことかどうか、検討する必要はあるだろう。