ほぼ想定されていたことだが、経済産業省は太陽光や風力発電の事業者がつくった電気を大手電力があらかじめ決めた価格で買い取る制度を終了し、新たな競争入札制度を導入してコスト低減を進める。当初高かった買取価格も大幅に安くなったが、固定価格買取制度が始まった頃の買取価格は変わらないことから、それが上乗せされる電気料金の割高感が言われている。買い取り費用は19年度で約3.6兆円にのぼる。うち家庭や企業に転嫁する分は約2.4兆円まで膨らみ、見直しの必要性が指摘されていた。経産省は対策として、ドイツなど欧州各国がFITの替わりに導入を進めている方式を取り入れる。しかし、家庭用の消費者はほとんどそれを受け入れて大きな不満にはなっておらず、大半は事業用の電力を使う需要家の不満だと思う。ドイツでは家庭用と事業用の電力価格への上乗せに差を付けて、産業への影響を少なくしていたが、日本は全て同じ金額が上乗せされている。制度設計思想の違いもあるようだ。
50~100キロワット超の中・大規模の太陽光や風力の事業者には、自ら販売先を見つけたり、電力卸市場で売ったりすることを求める。価格は取引先との交渉や市場の状況で変わることになる。固定買い取りのメリットをなくす替わりに、卸市場で電力価格が急落し基準価格を下回った場合は国がその分を補填する。この措置を受けられる事業者は基準価格に関する競争入札で選ぶ。入札に参加する事業者は自社の発電コストを考慮しながら基準価格の候補を出し、経産省はその価格が低い順に一定数の事業者を認定する。基準価格は落札した事業者ごとに違う価格になる見通しだ。入札は数カ月ごとなど定期的に実施する。小規模の事業用太陽光や家庭用の太陽光では買い取り制度自体は残すが、買い取りは全量でなく自家消費で余った分だけにする。買い取りにかかっていたコストは大幅に削減できる見込みだとされている。
小水力発電やバイオマス発電、温泉熱発電などはこの新制度の対象にはなっていないようだが、全体に共通する課題として、再エネ発電設備が連系される系統容量の不足は今後も長期にわたって続くだろう。その解消にはかなり政府の支援が必要となるが、具体案はまだ見えていない。