効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■曽爾高原のススキ

日本300名山の一つである倶留尊山(くろそやま)の麓に拡がる曽爾高原は、一面がススキに覆われた草原として知られている。秋のシーズンには多くの観光客が訪れる名所ともなっているが、もともとは民家の茅葺き屋根に使うススキを確保するための「茅場」となっていた。数日前の奈良新聞の記事で知ったのだが、ここのススキの生育が悪化しているという。生育不良の原因は特定できていないらしいが、土壌の栄養不足が一因と見られていることから、ここを管理している曽爾村がこのススキの回復に着手し、初めて有機肥料の散布を行ったそうだ。以前からここのススキを観に行こうと思ってはいたのだが、奈良の南の宇陀郡にあり、かなり不便なために実現していなかった。

村役場によると、10年ほど前からススキの生育悪化が顕著になったという。全体的に背丈も密度も低くなったようだ。夏までは順調に育つが、秋には穂が少ないという現象も見られるとのことだ。特に昨年は夏の猛暑と台風の影響で生育不良が著しかったらしい。ススキ減少の原因として考えられているのは、観光客が歩き回り踏みつけること、土壌の栄養不足、獣害、ササの侵入など植生の変化、気候変動などだ。村では本年度、「曽爾高原再生プロジェクト」を開始したが、肥料の散布はその一環。今回の散布は斜面部の約5ヘクタールが対象で、無人ヘリコプターで有機肥料120袋(一袋20キロ)分を散布した。これから3年ほどかけて、無人ヘリと人力で高原全体に散布する計画を立てている。株の植え替えと合わせて、ススキの名所を再生させようとするものだ。

気になるのは、この生育悪化が10年ほど前から顕著になったということだ。その間に観光客がどれほど増加したかは示されていないが、隈無く踏みつけるほどの人数が訪れて歩き回っているとは思えない。茅葺き屋根の材料として採取されるのが大きく減少したことで、ススキの世代交代が進まなかったことも影響しているかも知れない。昔から笹の侵入などを見つけて取り除いていたはずだが、その人手もなくなっているのだろう。そして、さらに要因として気になるのが気候変動。この地域の気象データが揃っていることが必要だが、それがあれば、ここ20年ほどの気温、湿度、雨量、日照などについて、変化がどのようになっているかを調べれば分かるはずだ。奈良県にとっても貴重な観光資源だから、予算を準備して、学術的な調査をするべきではないだろうか。

奈良県公式観光案内の写真を拝借。

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