効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■蓄電池の発火予防

蓄電池はその大小を問わず、内部でどのような変化起きているかを把握することは難しいということは理解していた。だから、家庭にまで蓄電池が普及するようになると、それが火事などの原因になるのを防がなくてはならない。それについて、必ずしも手軽な方法ではないが、内部の状況を画像化する技術が開発されたそうだ。

Integral Geometry Science(兵庫県神戸市)と神戸大学数理・データサイエンスセンター(同)は5月29日、蓄電池内部の電流と、蓄電池外部に漏洩した磁場に関する逆問題の解析を通じて、磁場の空間分布を測定することで電流密度分布をリアルタイムに非破壊で画像診断するシステムの開発に世界で初めて成功したと発表したというのがそれ。今後、電動車両の普及に伴って蓄電池生産量の増大が見込まれる中で、蓄電池の製造工程における全数検査が確立されれば、蓄電池の安全性を飛躍的に向上させることが可能となる。Integral Geometry Scienceは、今後2年以内に製造工程における全数検査が可能なインライン検査システムの販売を開始する予定だということだ。

今回開発した技術は、電流が流れる際に周囲に発生する磁場の空間分布を測定することにより、蓄電池内部の電流密度分布を測定するもの。開発においては、まず正極負極間の距離が電池の電極サイズに比べると無限に小さいとみなせることから、蓄電池内に流れる3次元的な電流は、薄い平行平板間に閉じ込められていると考えた。そこで、これを蓄電池における静磁場の基礎方程式に取り入れることにより、この逆問題を世界で初めて解析的に解くことに成功したというもの。

これまで、電流密度分布から磁場の空間分布を数学的に導出すること(順問題)は可能だったが、磁場の空間分布から電流密度分布の導出(逆問題)は非常に困難であり、実現されていなかった。しかし、同技術によりこの課題が解決された。さらに両者は、磁気センサーを2次元に並べることで、リアルタイムに磁場の空間分布を測定する装置を開発し、測定した磁場から逆問題の解析を行うことで、リアルタイムに非破壊で電流密度分布を映像化するシステムを開発した。蓄電池の発火原因を解明することが出来るようになったもの。発火事故などの原因の一つとして、出荷時の蓄電池内部の電流密度が空間的に不均一であり、その度合が蓄電池の充放電とともに次第に大きくなり、最終的には短絡、発火となることが考えられる。そのため、出荷前の蓄電池の電流密度分布を非破壊で精密に計測する技術が求められていた。同時技術は、こうした要望から開発されたものだ。今回の技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)の「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」において研究開発されたものだそうだ。

小型で蓄電容量の大きいものが商品として登場してくるのに伴って起きる可能性のある発火リスクを予防できるのは、社会的にも意義が大きいと思う。