効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■原発の出力制御と安全性

九州電力が再エネ発電からの出力抑制をすることが多くなっている。だが、原発は稼働している全基がほぼフル稼働している。少しくらい出力を絞っても良いのではないかとも思うが、それは安全性に問題がある可能性があるという考え方もある。フル稼働する方が全体の発電コストが下がるという理由が一番だろうが。最近興味ある実証試験のレポートを見る機会があった。四国電力が昭和62年と63年に行った出力抑制の安全性確認に向けたもので、その報告書が出ていたのだ。それから年数が経っているから、このままが現在にも適用できるかどうか分からないが、大いに参考になるだろう。その内容をそのまま掲載する。

<本文>

 電力は使用者側の都合によって使用量(負荷)が大きく変動するので、供給側が負荷に合わせて電気出力を調整しなければならないという宿命を持っている。

 我が国では、これまで原子力発電所が負荷の基底部分を受け持って定格出力一定の運転を続ける基底負荷運転を行い、負荷の変動にたいしては水力発電所や火力発電所が出力を変えてゆく負荷追従運転を行ってきた。

 本来、原子力発電所は出力の変動、すなわち出力を調整する運転ができるように設計されており、フランスでは既に実行されている。これまで一定出力で運転してきたのは、出力変動に伴う熱的変動によって燃料の被覆管にひびが入り気体状の放射性核分裂生成物(キセノン、ヨウ素等)が原子炉冷却水中に洩れてくる等の懸念があったからである。しかし、近年は被覆管の改良が行われるなどの対策がとられ、これらの懸念も解消されている。

 我が国においても、原子力発電の割合が増してくるに従い、電力供給調整の面や周波数制御の面から原子力発電所の出力も調整することが必要になる。

 このため、四国電力では、加圧水型原子力発電所(PWR)を持っている電力会社とメーカーとの共通研究として、伊方発電所2号機で出力調整運転の試験を(昭和62年10月と63年2月の2回)行った。

 この出力の調整方法では、100%出力で12時間一定運転した後3時間かけて50%まで出力を下げ、6時間一定運転した後再び3時間かけて100%出力に戻す「12-3-6-3運転」という、代表的な方法がとられた。

 試験の前には、コンピューターを使って予め解析を行い、各種のデータ(運転パラメーター)が運転のときに定められている範囲(運転管理目標)内に入ることを確認した。

 試験結果を 図1-1 および 図1-2 に示す。試験の結果は以下のように良好であった。

(1)電気出力

   電気出力は良く制御できた。

(2)主な運転パラメーター

  ・ 原子炉出力と一次冷却水の平均温度は安定に制御できた。

  ・ 出力を下げるときも上げるときも炉心の上下方向の中性子束のバラつき(偏差)は運転管理目標の範囲内に十分収まっていた。

  ・ 原子炉(加圧器)圧力はほぼ一定で安定に維持された。

(3)燃料

   原子炉燃料に異常が生ずると原子炉冷却水中のヨウ素濃度が上昇するが、試験の前後に測ったヨウ素濃度には変化がなく、燃料の健全性が確認できた。

  試験の結果、運転パラメーターは定められている管理範囲内に安定に制御されていることが確認され、また運転操作上も特に問題となることはなかった。

  このことから、現在の原発で「12-3-6-3運転」による出力調整運転は実施可能なことが確認できた。

 

同じような実証試験を再度どこかの原発で行うことは出来ないだろうか。