効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■クレーンによる重量物上げ下げをAIで制御した蓄電装置

スイスとカリフォルニアに本拠を置いたベンチャー、Energy Vault社、が面白い蓄電装置を開発した。系統に使われる大型蓄電池は、何回も充放電をすると劣化するし、その材料もレアーメタルを使っていてコストは高く、埋蔵量にも限度がある。このような課題を解消する蓄電システムを、円筒状に積み上げるレンガとクレーンの組み合わせで作ったという。

電動モーターで駆動するクレーンで重いレンガをつり上げ、再エネからの電力がなくなったときに、レンガを重みで下げてやり、その時に下に向かう力でモーターを発電機に利用して発電する。その操作を全てAIで行うというものだ。これを開発するヒントになったのは、水の重力(落下力)で発電し、水を汲み上げるときに電力を消費する揚水発電だったそうだ。水を大きな重いレンガに置き換えるという発想だ。揚水発電に必要な地形の落差がなくても発電出来る。

このレンガは廃棄された土砂で作り、そのコストは小さい。また、長期に使用しても劣化することはないし、安全に稼働させることができるという。このクレーン発電設備のkWh当たりコストは、同等規模のものの半分になると計算している。運転コストも少なくて済む。設備の寿命も30年を超え、その間劣化は起こらないとしている。(クレーンの補修は必要だとは思えるが。)この設備の容量は、10MWhから35MWh、発電能力は2MWと5MWの間であり、効率は90%を超えるとのこと。また、系統安定化に向けたアンシラリーサービスに対応できるだけの早い応答速度も持つ。建設コストは設備規模に応じたものになるが、土砂をセメントで固めるコスト、重量物を支える地盤の強化、原料の廃棄土砂のコストが主要なものとなるとしている。

どのようなものか、形状を想像することが難しいが、Energy Vault社のホームページにそれがある程度分かる動画が準備されている。

https://energyvault.ch/

必要に応じて複数のレンガをクレーンで挟んで上下させるもののようだ。