オーストラリア国立大学(ANU)は、同国における再生可能エネルギー発電設備の1人当たり年間導入量が世界最多という調査結果と、パリ協定での合意による温室効果ガス排出量の抑制目標を5年前倒しで2025年に達成可能とする見通しをこの2月7日に発表した。ANUで同調査を主導した電気・エネルギー・材料工学部(RSEEME)のアンドリュー・ブレイカーズ教授は、オーストラリアでは2018年の国民1人当たりの再エネ設備の導入容量が、欧州連合(EU)や日本、中国、米国より4~5倍多かったと述べている。同教授は、「オーストラリアの電力は2024年までに50%、2032年までに100%が再エネになる。パリ合意の排出量抑制目標は、5年前倒しとなる2025年に達成できるだろう」との見通しも示したということだ。
同調査の共同研究者であるマシュー・ストックス博士によると、パリ合意で定められた30年の時点における温室効果ガス排出量の目標を達成する正味のコストはほぼゼロという。その理由は、高価な化石燃料がより安価な再エネで置き換えられるためである。これはここ数年、風力・太陽光発電の設備コストが急速に下がったことで可能になったのだが、出力変動を予測しにくいこれらの再エネ発電が主体となると、変動する需要に対応するのが難しくなるはずだが、この調査では、蓄電、デマンドマネジメント、高圧送電線の相互接続を州間で強化することなどによって電力網の安定運用が可能だとしている。豪州で蓄電技術として現時点で進んでいるのは、揚水発電と蓄電池。最近豪州では大規模な蓄電池の設置が進展していることから系統管理に自信を持つようになっているのだろう。蓄電池価格の低下も再エネ利用の増加に貢献している。
そうなると豪州炭は国内でほとんど火力発電には利用されなくなるが、輸出に回すなり、水素製造に使われるようになるのだろう。