効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

送電系統に接続される大型蓄電池

 米国カリフォルニア州のPG&E(Pacific Gas & Electric)社は、サンフランシスコ周辺に電力とガスを供給する米国でも有数の規模を持つ民営の電力・ガス事業である。同社が6月29日に出したプレスレリースを読む機会があり、驚きを抑えることが出来なかった。全体で567.5MWという大規模容量のリチウムイオン電池を設置して送電系統に接続するというものだったが、その具体的な計画内容を手短に紹介すると次のようなものだ。

 PG&Eは、2018年1月にカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)に対し、サンフランシスコ湾周辺にある3つの地域への電力供給を対象にした大容量蓄電池の設置をしたいと申請して認可を受け、広く事業の具体化案を募った。多くの提案がなされたが、その中から4事業を採択し、それを実施に移すについてCPUCの認可を申請するに至ったというものだ。その4つの内1つは、PG&E自身が保有して変電所に設置する182.5MW規模の蓄電池。残りの3つは他事業者が設置するものをPG&Eが利用することになるが、その内1つのプロジェクトは幾つかの需要家の事業所内に設置されたものを統合(アグリゲート)して一つの変電所に接続する形になるもので10MW。他の2つは、75MWと300MWのものが異なった場所に設置され、送電系統に接続される。どの蓄電設備も放電時間の上限は4時間ということだ。
 
 このように大規模な蓄電池設置に至る背景を調べて見た。PG&Eはサンフランシスコ湾周辺に老朽化したガス火力発電所を3基稼働させてきたが、これを新規設備にすることを計画していた。それに対しカリフォルニア州全体の系統を制御管理しているCAISO(California Independent System Operator)から、この火力発電設備を廃棄しないで、太陽光や風力発電のように天候によって出力が変動する電源が系統に与える攪乱要因を抑制する目的に運用して貰えれば、その機能に対して固定料金を支払うという申し入れがあったようだ。だが、可能な限り再生可能エネルギーを増強させ、かつ蓄電容量を増やしたいCPUCはこの提案を認めず、PG&Eに蓄電設備の増強を要請し、PG&Eもそれに対応することになったらしい。これに対して消費者団体からは、大規模な蓄電池の採用は電気料金の値上げにつながるのではないかという懸念も出された。だがCPUCは、最近の蓄電池価格下落状況から見てその心配は不要だし、古いガス火力発電設備を休止させることによって化石燃料である天然ガスの消費を抑制できるとして、PG&Eが新規に提案した蓄電池プロジェクトの推進に着手することを認めたのだった。

 PG&Eの発表によれば、一つの大規模蓄電池設備が2019年に稼働を始め、2020年には全ての設備が系統に接続される予定になっている。この一連の設備が稼働した後に、電気料金がどのような動きになるか予測しにくいが、これより前にオーストラリアで大規模リチウムイオン電池が設置されており、燃料コストがゼロの再エネによる電力が増加した結果、系統管理コストが大幅に下がったという報道記事もある。南オーストラリア州は2016年9月、強風に襲われ、変動する風力発電出力が系統に与える影響を制御できなかったために広域停電に見舞われた。これに対し、再エネを推進する州政府は、今後に備えて緊急避難的に資金を出してテスラ社製の100MW蓄電池を17年に設置。続いて18年末にヴィクトリア州にも30MWと20MWが設置されたが、両州ともに電力事業の収益性を高めることになるとしている。

南オーストラリア州のウインドファームに設置された100MW蓄電池の写真は

https://www.news.com.au/technology/innovation/true-cost-of-sas-big-tesla-battery-revealed/news-story/4c6dbf0505b6b0a6697ab8fc97cdf9b2 で見ることができる。