これまでになり奇妙な進路を辿った台風も去って、元の暑さが戻ってきた。しかし、日本の産業界だけでなく、国民全体にも影響が出ることがさらに明らかになってきた。以前にもここで心配したことのある、日立が英国の原発を建設するプロジェクトが暗礁に乗り上げたという趣旨の報道があった。東芝がウエスティングハウスを買収したことが、結果として買収企業の子会社が進めていた原発の建設プロジェクトがうまく進展しなかったことから、巨額の損失を出すことになったのであるが、今回のものは、日立自身が英国政府の原発建設に参加したことによって大きな損失を出す可能性があるということだから、重大なこととなる。 日立製作所は、英国での原発計画をめぐり、現時点で中止すれば最大約2700億円の損失が生じるとの見通しを示している。着工の可否は来年中に判断する。着工への手続きや調査にも費用がかかり、中止決定が遅くなれば、損失はさらにふくらむとみられると報じられているが、その確率は極めて高いと思える。子会社を通じて英国に原発2基をつくる計画。安全基準の厳格化などで事業費が高騰する見通しで、最大3兆円程度になるとみられているが、英国政府が原発建設を見直すのは確実だろう。地球温暖化の深刻さが今年に入って世界で具体的に示されているが、炭酸ガスを排出しないからといって原発がコスト高になっても推進するほど世界は甘くない。カーボン・キャプチャーの方向に行くだろう。日本がいつまで原発に依存しようとしているのだろうか。