効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

水素社会に向けて

2015年からは燃料電池自動車も商品として市場に出てくる。この時に大きな制約要因は、電気自動車の充電設備の少なさと同じで、燃料電池の燃料である水素を充填する場所が少ないということだ。燃料電池自動車は一回の水素充填で走れる距離はガソリン車と同等以上だが、主要都市に幾つか充填できる場所がなければ走るのに不安がある。これとは直接関係する報道ではないが、今日、千代田化工建設が水素発電所の実用化に必要な技術を開発したという記事を見た。燃料の水素を低コストで供給できる。国内外の企業と設備の商談に入っており、早ければ2〜3年後にも世界初の水素発電所が稼働する見通しだという。
化学工場や製鉄所では製造工程の副生物として大量の水素が出ている。千代田化工は液化した水素を常温で貯蔵・輸送し、その後に効率的に抽出できる設備を開発。出力10万キロワット程度の小規模な発電所に水素燃料を供給できるということだ。この技術を利用すれば、燃料電池の充填設備へ水素を配送することが簡単でしかも安くできるように思える。あるいは集合住宅や新設の団地などで水素供給が簡単にできれば、燃料電池で発電して周辺に配電することも可能となる。
水素は有機化合物のトルエンと混合すれば、常温で貯蔵可能な液体になるが、そこから水素だけを取り出すことが難しかった。千代田化工の新技術では独自開発の触媒を使い98%以上という高効率で取り出せる。同社が現在試算する水素発電のコストは石油火力より低いが、石炭や天然ガスの火力より約6〜8割高い。設備改良などでコスト抑制を急ぐという記事から見ると、本当の意味での水素社会実現に向けた一歩を踏み出すことになると思える。これまでも水素吸蔵合金などの貯蔵方法が開発されていたが、コストもかかり使い勝手も悪かった。今回の新しい技術が報じられたような形で定着すれば、世界にも提供できる技術となるだろう。