再生可能エネルギーの利用を促進するための手段として、特定の地域にだけ通用する地域通貨を発行して、エネルギーを生み出した量に応じて、あるいは、設備を作った人に一種の報奨としてその通貨を渡す、ということが論じられてから長い。しかし、その具体的な運用についてあまり継続性のある成功例を聞いたことがなかった。だが、今日日経の茨城県を含めた地域版に、未利用の間伐材を持ち込んだ人に地域通貨で買取り、それが地域内のお店で使えるようにして定着し始めている例が紹介されている。
このプロジェクトは、茨城県常陸大宮市の民間団体「森と地域の調和を考える会」が中心となった実行委員会が主催し、美和木材共同組合などが協力する形となっている。山林所有者らが山に残された商品価値の低い間伐材などを持ち込むと、実行委員会が数量に応じた地域通貨「もり券」を発行する。もり券は商品券として焦点や飲食店など約60カ所で使える。この間伐材は木材組合が買い取ってキノコ栽培などに使い、おが粉を農畜産事業者に販売する。今年の6〜7月を第一期、10〜11月を第二期と期間を区切って買取り、一期には目標の2.8倍の約280万立米を集め、発行した約140万円のほぼ全てが地元商店などで使われ、二期でも200立米以上が集まったという。来春に第三期を予定。
課題はこの事業を継続させるための収益性確保。第一期には間伐材買取価格5千円/立米で、間伐材の販売価格より高かったために赤字が発生して考える会が補填している。そのため二期目には買取価格を4千円に下げた。また、改善策として無料で間伐材を引き取る寄付材を募集したほか、研修を受けたボランティアが無償で集材する試みもしている。これによって二期は収支がほぼ均衡する見通し。今後はもり券の使用期間延長や、まきの製造販売、温浴施設への燃料チップ供給なども検討して収益性を確保したいとする。
地域通貨については、収支均衡を超えて収益性を長期的に確保するのが難しいのがどこでも障壁となるのだが、森林の改善だけでなく地域振興につながるだけに、地元での消費もできる良い商品の創造と流通を支える組織作りが重要となる。この記事は好意的なものとなっているが、来年にどのような成果を出すか、続報をしてほしいものだ。