EUは2020年を目標に、温室効果ガスを1990年比で20%削減、最終エネ消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げ、総エネルギー消費を20%削減する通称「トリプル20」の目標を掲げている。これが風力発電や太陽光発電を推進する大きな理由の1つだが、それ以外に、熱利用分野での再生可能エネルギーの利用拡大にも力を入れている。どこからの熱を再生可能エネルギーとみなすかが1つの問題だが、ヒートポンプが利用する大気の熱利用をその1つに位置づけ、ヒートポンプ方式からの熱利用が20年の導入目標量の約50%を占めるという。ただ、ヒートポンプで給湯・暖房に利用される熱がすべて再生可能エネルギーと見なされるわけではない。ヒートポンプは動力として電気を利用し、大気や地中、水の熱を取り出すシステム。09年のEU指令では再生可能エネルギー量の算定にあたり、最終的に出力される「有効熱量」から、運転で消費されるエネルギー(電気)の量を差し引くという考え方が示されている。その算定式が2013年までにガイドラインとして示されることになっている。
ヨーロッパ諸国は北にあるところが多いため、給湯暖房の需要が大きい。それも殆どが貯湯式となっていて、これまでは、天然ガスや灯油を熱源とするものが多かった。最近エコキュートのような給湯暖房機の技術が発達して、かなりの低温でも十分熱を得られるようになったことから、ヒートポンプ方式のものが売れ始め、各国でも設置を奨励するようになっている。この分野で高い技術をもつのが日本で、これからの市場で大きなシェアを占める可能性がある。このシステムをスマートグリッドで機能させることを具体化している国もある。変動する自然エネルギーの出力をこれに連系させるために、情報端末を取り付けることを義務づけているところもあると聞く。日本ではどのような展開になるだろうか。