効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

原子炉の冷却

福島原発のトラブルの基本的な原因は、原子炉にある核燃料、あるいは、使用済み燃料の冷却が設計通りに作動しなかったからだ。不幸なことに、今回の問題は、想定外に強い地震があったことだけでなく、想定外の巨大な津波原発を守る筈のフェンスを軽く乗り越えてしまっただろうということも重視しなければならない。想定外がダブルに効いている。もし津波がなければ、地震によって原子炉を停止させる制御はうまく働いていたのだから、これほどの惨事にはならなかったのではないかと思う。
強い地震を感知した原発はすぐに原子炉を停止させるべく、制御棒をウラン燃料棒の中に落とし込んで核分裂を成功裡に停止させた。核分裂が停まっても、それまで高温であった部分を冷やしてやらなければ、核燃料が溶けてしまう。そこで、通常であれば即座に冷却水を注入する手筈になっているものが、その冷却水を注入し循環させる系がスタートしなかった。注入循環させるにはポンプを回さなければならず、それに繋がったモーターを回す電気が必要だ。ところが、大地震原発に電力を供給している東北電力の系統が完全に停電してしまったから、通常であれば東北電力の系統からの電気で回すはずのモーターを動かせなくなってしまった。それは想定されていたことだから、非常用のエンジン発電機が対応することになる。ところが、これも全部が立ち上がらなかったようだ。そのため、冷却装置が機能せず、炉心の温度が急上昇した。核分裂が停まっても、放射性物質の崩壊熱で温度が上がっていくからだ。そうすると、炉心にある水が蒸発し始め、ということは水の量が減って核燃料を覆うことができなくなり、ますます温度が上がることとなる。その温度が、冷却に使うはずの水も蒸発させ、炉心を格納する隔壁内部の圧力が上がってくる。それが限界を越えると隔壁が破壊される怖れがあるために、通常の方法ではなく、ポンプ車などを使って人為的に水を外から圧入して温度を下げようとしたが、圧力が高くなっているために十分な量を押し込むことができなかった。その内に、冷却水が不足する事態となり、海水を使ってまで冷却しようとしている。海水を使った原子炉は、永久に使えなくなることを覚悟の上でのことだ。
なぜ冷却ポンプが作動しなかったか。津波発電所内に入って、非常用発電機も含めた冷却システムを水浸しにしたからだと推察できる。だからこそ、原子炉だけではなく、使用済み核燃料を保存していたプールの水を循環させるシステムも死んでしまい、まだ熱を発している燃料棒を冷却できず、温度が上がった水と反応して水素が発生して爆発したのだろう。
いま現場では、自分の身を顧みない作業が続いているはず。この方たちの安全を祈り、作業が成功するのを期待するしかない。