瀬戸内海に浮かぶ山口県上関町祝島に住む約500人の島民が、自分たちが使う電力の100%を自然エネルギーで賄うという構想を公表したと毎日新聞が報じている。その構想に向けて「祝島千年の島づくり基金」を発足させている。この島は、中国電力が1982年に原子力発電所をその対岸に建設する計画を出したのに対して、一貫して反対している。島民は漁民が多いから、海が汚染されるのを怖れてのこと。そして、原発に反対する住民はエネルギーを自給させることを考えるようになっている。反対を始めたころにエネルギー自給など考える余地はなかっただろうが、いまではそれを可能にする方策はある。住宅100戸にそれぞれ3〜4キロワットの太陽電池を設置。し尿をメタン発酵させたガスを使った発電や小型の風力発電、太陽熱温水器を順次導入して、これから10年間で全ての島民が暮らすのに必要な1000キロワットのエネルギーをまかなう。
ここの特徴は、趣旨に賛同する企業やアーティストらから売り上げの1%を寄付して貰うことだ。そして、エネルギー自給に加えて、豊かな自然を生かしたエコツーリズムや海産物などで経済的な自立を目指している。このプロジェクトには、自分が理事をしているNPO「環境エネルギー政策研究所」(ISEP)が協力している。この研究所は、市民が資金を出し合って風力発電や太陽光発電を建設運営する事業を各地で成功させている。順次進めていけば人口が少ないだけに実現の可能性は高い。最終段階に近づけば、電力を売ることもできるだろう。これに対して中国電力はどう対応するだろうか。
この記事には徳島県上勝町が拡充しようとしている水力発電やバイオマス発電の活用も書かれている。自分が論文指導した修士学生が行った調査では、昔製材用動力に使われた水力発電の跡地が幾つもあって、その再利用が十分可能だということが分かっていた。町もその方向に向かっているらしい。再生可能エネルギーに対する社会の認識も高くなっているし、政府の推進施策も拡大しているから、あちこちでこのようなプロジェクトが生まれるのではないか。
再生可能エネルギーの利用によって削減できるCO2の価値を地域通貨のように利用することも可能だ。その時には、発電した電力を電力会社に売るとその価値も買い取られるはずなので、来年から実施される可能性がある固定価格買取制度を利用しないことも考えられる。