効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

ニーズあっての技術開発

欧州連合EU)の欧州委員会が、中国のレアアース(希土類)輸出制限について「大きな懸念」と厳しく批判している。WTOなどへの提訴など当面の対応策とは別に、レアアースの備蓄や、使用済みの家電や自動車などの、いわゆる都市鉱山からの資源回収・再利用に乗り出す方針を示した。基本的には日本も同じ対応をとっているのだが、中国の資源支配の影響は、このような対応だけで効果的に軽減される保証はない。
昨年末、京都大学の北川宏教授らが、レアメタルパラジウムそっくりの性質を持つ新合金を作る出すことに成功したという記事を見たのを思い出した。レアメタルも中国との関係ではレアアースと同じ状況だ。この手法は面白い。元素の周期表パラジウムの両隣のロジウムと銀を材料に、いわば「足して2で割って」、中間のパラジウムを作り出したのだ。ロジウムと銀は通常、高温で溶かしても水と油のように分離する。北川教授は、金属の超微細な粒子を作る技術に着目。同量のロジウムと銀を溶かした水溶液を、熱したアルコールに少しずつ霧状にして加えることで、両金属が原子レベルで均一に混ざった直径10ナノ・メートル(10万分の1ミリ)の新合金粒子を作り出した。新合金は、パラジウムが持つ排ガスを浄化する触媒の機能や水素を大量に蓄える性質を備えていた。これは世界初の手法で、複数のレアメタルの代用品の合成にも成功、資源不足の日本を救う“現代の錬金術”として注目されそうだ。考えようによっては、昨年ノーベル賞を受賞したクロスカップリング手法と同じようなものと評価してもよいかもしれない。アルコールはどういう役割を果たしているのだろう。
この手法の開発については長い蓄積があったに違いないが、中国の資源外交に世界が頭を抱えているときに成功したというのは、このような事態の出現を予測していたのかとも思える。クロスカップリング手法も、化合させるのが難しいものを合成させる触媒を見つけ出して、合成化学を大きく進歩させたのだが、これと同じように大きな影響を世界に与えるかもしれない。やはりニーズがなければ技術開発の成果は生まれないのだなと感じた。