どうも蓄電池というとリチウムイオン電池でないと電池ではないようなことが言われることが多い。しかし、電気自動車のようにスペースも重量も制約が厳しいものに搭載する電池としてはリチウムイオン電池でもまだ不足するくらいだから、ここ当面RI電池でなくてはならないだろう。しかし、地上設置型のものであれば、高価で特性もまだ様々で多分使いにくく、安全性についても必ずしも万全とは言えないRI電池を使う必要はないと考えていた。ニッケル水素電池、あるいはこの頃改良が進んでいる鉛蓄電池でも良いはずだからだ。
この26日に関西電力、日新電機、川崎重工業が、ニッケル水素電池を利用した製品として初めて、電力ピークシフト、瞬時電圧低下対策および停電対策を同時に兼ね備えた多機能電力貯蔵装置を共同開発したと発表した。従来の同装置の主流だったナトリウム硫黄(NAS)電池を利用した製品に比べ、高出力、高効率な点が特徴で、中小規模のビル・工場などでの利用を見込む。きょう27日からフィールド試験を開始し、来年度から13年3月まで検証・装置の改良を行う。15年ごろまでに商品化する考えだという。ニッケル水素電池はこれまで、小型の充電電池やハイブリッド自動車用に使われてきたが、その他の大容量のものはあまり聞いたことがなかった。川崎重工が電車への搭載を発表していたくらいだ。系統に接続して使用するということだから、充放電の回数も多くなるので、その頻度に耐えられるかどうかも一つの課題だろう。関西電力は以前、住友電工と一緒に、このような目的に使うレドックスフローバッテリーを開発して幾つかの所で実証のための設置をしていた。ところが、その電解液に使うレアメタルの一種であるバナジウムの価格が上がってしまったために本格的使用を諦め、住友電工も販売を中止してしまっていた。そのため系統に接続する大型蓄電池としてはNAS(ナトリウム硫黄)電池しかなかった。これは東電と日本碍子が開発商品化したもので、世界からスマートグリッドへの応用に向けて注目を浴びつつある。今回の関電の動向は、東電への対抗という意味もあるように思える。NAS電池は常に電池内部で3-400度の温度を保たす必要があるので小型化ができない。もし今回のニッケル水素電池の設置によって安定的な系統制御ができるのであれば、NAS電池の有力な対抗馬となりうる。50キロワット単位で組み合わすことができるそうだから、その性能が解明されれば、リチウムイオン電池よりも価格が安い定置用の蓄電池として、住宅やビルにも使われるのではないかと期待する。