今日の日経一面に理解に苦しむ記事があった。インターネット経由で情報処理サービスを提供する「クラウドコンピューティング」の拠点を、原子力発電所を持つ自治体に設置する試みが動き出す。電源立地交付金を活用し電気料金を最大半額に抑えるのが特徴。1号案件として、インターネットイニシアティブ(IIJ)と中国電力、日本ユニシスと関西電力がそれぞれ島根県、福井県にクラウドサービスのデータセンターを建設する、というもの。
確かにクラウドビジネスの基本となるのは大規模なコンピュータが設置されたデータセンターで、消費電力が大きいだけでなく46時中稼働しているし、普通の電力供給がどのような理由であれ停まっても、運転を継続できるバックアップ電源を持っている。このような設備は発電所の近くに設置すると、送電ロスの削減ができるという理屈は分かる。しかし、なぜそれが原発の傍に限定して誘致されるのだろうか。それも電源立地交付金という日本の電気の消費者が電気代の一部として自動的に払わされている一種の税金を貯めたものを充当してまで誘致しなくてはならないのだろうか。発電所の近くであるという条件だけ考えれば、大都会の沿岸部にある石油火力などでも良いはずだし、いくら電力消費量が大きいといっても発電所の規模から見れば取るに足らないものだ。
原発立地の自治体は田舎にあって、成長産業がない。そこへこれから伸びる情報産業の核となるクラウドビジネスを支える大型のコンピュータ設備を誘致するのは、雇用の確保、固定資産税の増収(固定資産税をたとえゼロにするとしても、永久にではないはずだから)の観点から見て理解はできる。しかし、電源開発促進税は、新規の電源立地に使われるのが本来の筈。すでに稼働している原発の近くにデータセンターを誘致するのに使うのはおかしいのではないか。何か隠された意図があるように思える。原発増設計画があるところにこの制度が適用されるのではないか。立地自治体にとっては棚からぼたもちだろう。出力変動をさせない稼働が必要な原発の傍に、需要の変動が少ない連続運転をする大型電気消費設備を持ってくるのは、原発の安定稼働に少しは貢献するのかもしれない。だからといって電気料金を最大半額にまでして引っ張ってくるには相当な理由がなければなるまい。何か変だ。