効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

超電導電力ケーブル

11月11日の電気新聞に、「日本の年間電力総需要約1兆キロワット時のうち、約5%に当たる500億キロワット時が毎年、送配電ロスとして失われている。低炭素社会実現に向け、このムダを解消するため期待されているのが超電導電力ケーブルだ。」と書かれている。かなり前から高温超電導電力ケーブルに関心があって調べているが、これまで長い超電導電線を製造することが難しかったのが、数百メートルのものが実用的に作れるようになっていると聞く。金属の中には絶対温度0度近くで電気抵抗がゼロになる現象が知られていたが、この温度をマイナス192度で液化する窒素の温度より高いところで超電導となる素材が見つかり、それを電線に応用する研究が世界の電線メーカーで行われてきた。米国ではすでに2年ほど前から実証試験を行っており、American Semiconductor社に加えて、住友電工の製品も試験され、良い結果を出しているそうだ。国内でも来年から新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)のプロジェクトの一環として、東京電力と共同で電力系統に接続した試験が実施される。東電の旭変電所(横浜市)内に長さ200〜300メートルのケーブルを設置し、電圧6万6千V、電流3千Aで世界最大のパワー密度を達成することを目標としている。
記事に述べられているように、従来の銅ケーブルに比べて細い線、低電圧で大電流を流せる。送電設備を拡充する際、銅ケーブルなら直径2〜3メートルのトンネルを掘らなければならないところを、超電導なら直径15センチメートルほどの既設管路を使って通すことができる。低電圧で大電流を送ることができれば、超高圧から低圧まで複数の変電所を段階的に置く必要もなくなる。また、超電導には直流送電に適しているという特徴がある。交流だと磁場の変化によって、小さいながら一定のロスが生じるのに対し、直流ではロスなく送電が可能。そして、直流送電は太陽光、風力発電といった、再生可能エネルギーとの相性が良い。直流なら線路の数も交流より一本少なくて済む。
超高圧受電をする工場や建物へ送電線から接続するのに高温超電導線を使えば、いまでも有効なアプリケーションとなるだろう。根元だから従来なら太い電線を使わないといけないところが細い電線、細い地中管路で済む。建物が直流化していれば、高圧を直流にしてから供給すればまったくロスなく供給できることになる。液化窒素を絶えず冷却するための電力はロスト見なされるが、全体としてのロスは大きく下がるだろう。今後が楽しみだ。