効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

高効率吸収式冷温水器

大型ビルの空調は、冷水と温水を作ってパイプで建物の中を循環させ、途中で空気と熱交換させて冷風、温風を部屋に送り込むようにしている。昔からよく使われているのは電気でコンプレッサーを回して冷水を作り、ボイラーで温水や蒸気を作って暖房する方式だが、ガスや油を燃焼したり、高温の排熱を使って作動する吸収式令温水器というのがある。この場合は一つの設備で夏と冬の両方に対応できるため、また、夏の高い電力を使わなくても済むので、ビルや地域冷暖房用に結構普及している。ただ、電気を利用するものの効率が最近急速に上昇しているのに、COP(エネルギー消費効率)が1.3ほどに留まっていた。一次エネルギーであるガスを燃料とすると、電気が二次エネルギーギーであることを考慮すると、電気式のCOPが4ほどに相当するのだろうか。電気式のCOPが上がってきたために、吸収式の魅力落ちてきていた。
電気新聞によると、日立アプライアンスが吸収式令温水器でCOPが1.60のものを開発するのに成功したようだ。ここで興味を惹くのは、吸収式の原理部分の効率を上げただけではなく、設備システム内で冷媒を循環させたりするのに消費される電気の削減が大きく効いているようだ。記事によると『循環する冷温水流量と空調機の送風量を低減する「大温度差システム」により空調システムの搬送動力を従来機種比30%削減。さらに冷房負荷に応じて冷却水の流量を減らす「冷却水変流量システム」により冷却水ポンプの動力を約50%低減させた。』とある。
大温度差システムの意味がはっきりしないが、多分熱交換機を流れる二つの流体間にある温度差を大きくして、熱交換効率を上げたのだと思う。これは必ずしも吸収式の原理部分の改良ではないかもしれない。しかし、搬送動力は吸収式の場合原理部分でもポンプが作動しているから、ポンプの効率を上げ、それを動かすモーターの性能を上げ、流体が流れるパイプの圧損を低減するなど、細かい改善が積算されて大きな効率向上になったものだ。燃料電池発電効率が向上したという時に、電池部分の効率向上という場合と、燃料を入れて、実際に利用する電気に変換した出力との間の効率向上という場合がある。後者の場合の効率は、ポンプやインバーターに関わる電力の損失を計算に入れたものだから、発電機システムの発電効率は、電池自体の効率よりかなり低くなる。いわば、発電した電気を自分が動くのにどうしても必要な部分で使っているのだ。現在の燃料電池開発でも、補機類の効率を上げることが極めて重要な技術開発となる。
何度もここで書いているが、ポンプやモーター、それに流体が通るパイプの効率を上げることが極めて重要であることが今回の吸収式冷温水器の高効率化でよく分かる。
これを書いているのは、大学の2講座を終えて上京途中の新幹線「のぞみ」の中。有難いことにN700系車両だったので、壁に電源端子があるお陰で電池の消耗を心配する必要がない。新三田から大阪までの車内で使った電池の充電もしてくれている。