効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

太陽光発電の出力抑制

次のような報道記事を見た。
経済産業省資源エネルギー庁は30日、太陽光発電を大量導入する際に必要な系統安定化策の骨格を固めた。連休中などに太陽光パネルの出力を抑制することで、2800万キロワット程度まで余剰電力対策をとらずに導入できると試算。電気自動車などの追加需要創出と合わせ、蓄電池費用などを大幅に減らせるとの見通しを示した。今後は配電対策を行うことを前提に蓄電池や揚水発電を考慮した最終的なシナリオをまとめ、系統安定化対策の総費用と負担のあり方を整理する。」
何を目的としてこのような対策が講じられるのだろうか。今後太陽光発電の導入が促進されるとはいえ、何万キロワットが一度に導入されるわけではない。また、風力発電と異なって、昼間しか発電しないことははっきりしているのだから、いくら導入量が増えたとしても、出力抑制などしなくても既存の火力発電所の出力を抑制すればほとんど問題なく対応できるはずだ。蓄電池や揚水発電を系統に増強するような言い方だが、これは地域的な系統内での対応を全くしないで蓄電池に太陽光発電で発電した電力を貯めることによって、電力会社が系統対応をしなくても良いようにしようとしているのだろう。
しかし、ここに揚水発電が入ってくるのがよく分からない。今までの揚水発電は、夜間にも原子力発電はフル稼働させないといけないために、深夜に余剰となった能力をそのまま使って発電させ、その電力を使って昼間水力発電所で発電した水を下に貯めておいたものをポンプで上流側のダムにまで押し上げて、それを再度昼間に流して使うというものだ。この発電コストは通常の発電をはるかに上回るものとなる。太陽光発電のためにこれから新規に揚水発電所を建設するのは、太陽からの電力を使い切れないというのだろうか。揚水発電は水のあるところでないと意味がないのだから、太陽からの電力をいったん系統に受け入れるのに違いはない。連休や新年などで電力需要が大きく下がることがあるとはいえ、貴重な自然エネルギーをそのまま使わずにコストをさらにかけて貯蔵するのだろうか。それよりも既存の火力発電の稼働を絞る方がよほどコストも少なくて済むし、化石燃料消費の削減にもなるはずだ。太陽光発電の場合、設置場所で使い切れなかったものは系統に流して売る形になっている。それは通常の電気料金と同じだから、電力会社から見て高すぎるので、それを抑制するために出力自体を絞るというのだろうか。
太陽光発電は昼過ぎにもっとも出力が大きくなる。それが一斉に起こるとどんな不都合が系統に起こるのだろうか。大型の電気炉のスイッチを切った時には電力負荷が急に下がるが、ちょうど急に太陽が照って発電すると、見かけ上その地域の負荷が落ちたのと同じになる。電気炉の場合には系統の対応はできているのだから、それよりももっと緩やかな出力変動が昼間に分散して起こるのを系統がどうして受け入れられないのだろうか。蓄電池設置、出力抑制を太陽光発電設備側で行わないといけないとすると、設置者が負担するコストがまた増えることになる。電力会社のエゴとも言える要求を、政府は安易に受け入れるべきではない。電力会社は、太陽光発電が増えると系統対応に必要なコストが増えて電力料金を上げなくてはならないというかもしれないが、それは温暖化対応コストとして消費者も納得して払うだろう。ただ、コストアップの理由をきっちりと説明してほしい。発電所の増設をする必要度も下がるし燃料使用量も減るのだから、それと相殺した計算もした上で料金アップの計算をしてほしい。