効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

昨日戴いたコメントについて

今日は大阪の梅田にある関西学院大学梅田キャンパスで、私が客員教授をしている総合政策学部の学生が考えている最中のビジネスプランをヒヤリングするので一日が暮れました。11月に開催されるコンテストに向けての策定プランに、企業経験がある3人がアドバイスするというものでした。5組がそれぞれに共通テーマに向けて考えていることをプレゼンテーションしたのですが、興味深いものもあって楽しみました。しかし、流石に疲れました。
ところで、昨日9月11日の記述にコメントをいただいたのにご返事します。
再生可能エネルギーと系統の安定性について興味がある者です。
太陽電池の分散設置(各家庭レベル)を大量導入させた場合の問題点は、逆潮流による配電線末端電圧の上昇だと思っていたのですが、違うのでしょうか?もちろん家庭の負荷変動に対する対策は採られていると思いますが、それは順方向への潮流の場合であって、逆方向への潮流は(実際にやって問題が発生するかどうかはさておき)設計時に意図されていないと聞いています。家庭において太陽光発電による発電電力が需要を上回る場合(日中家を空けているところが多ければ、かなりの数の家庭がこのケースに当てはまるのではないかと思うのですが)、その電力潮流は配電線へと向かい、配電線の電圧が過剰に上昇してしまうというのが一般的に言われていることだと思います。この問題を解決し、かつ昼に発電した電力を夜間においても有効に使うことを考えれば、バッテリーを接続することはやむをえないのではないかと思うのですが。
もちろん初期投資額の増加という問題はありますが、技術的な観点や効率面の話とそれはまた別だと思います。この見解は間違っているのでしょうか?よろしければお答えいただければと思います。』
という高度な内容です。私もいわゆる技術屋ではないので、どこまでお答えできるか分かりませんが、トライしてみます。
電力の送配電が伝統的に発電所から需要末端に向けて一方向に流れるようにできていることは仰るとおりです。ただし、欧米では送電については流れが双方向に行われるようになっています。日本でも東電管内では双方向になっているところがあります。しかし、地域の変電所から家庭までの配電系統は需要端である住宅に向かって一方向に流れるようになっています。ご指摘の点は、この一つの枝に接続されている住宅群に沢山の太陽光発電設備(PV)が接続されたら、各家庭で使い切れなかった電気が配電系統に逆流するために電圧が上昇してしまうのが問題ではないかということでしょう。私が言いたかったのは、このような状況になるまで普及すれば、これに対応した配電系統の整備がなされるでしょうが、現在の普及状況では、一つの配電線に接続されている住宅の数に比べてPVの数は極めて少ないため、余剰分が系統に流れてもそれは周囲の家に流れて使われることになって、変電所から見た負荷が少し下がるだけになるはずです。また、もし一本の系統に沢山のPVが接続されて消費電力よりも余剰電力が多く発生することがあるとしても、エンジンなどによる発電とは異なって、発生電力が多くなって系統の電圧がある高さ以上になると、インバーターから系統に逆流させることができなくなるはずです。(この点は専門家に確認中で、修正の可能性があります。)
この時に、問題ありとされる余剰分をバッテリーに貯めて夜に使うというのは、一番需要が発生して発電所がフル稼働している昼間にPVの電力を使わず、電力会社の発電設備が大量に余っている夜に使うということですから、電力会社にとって最悪の状況です。このようなことにならないよう、PVの余剰分はできるだけ使うようにしてRPS(再生可能エネルギーによる電力比率義務量)に充当したいはずです。だとすれば、系統が逆流を受け入れるようにする技術はありますから、それを利用するはずです。それには投資が必要になりますが、それが幾らぐらい必要かがよく分かりません。PVは昼だけしか発電しないということは、風力発電と基本的に異なっている点ですので、系統の対応方法も異なってきます。
ある地域にPV設置が増加するのは電力会社でも分かりますし、ある日突然増えるわけではありませんから、従来の一方向だけの流れに設計されている系統に手を入れることになるでしょう。逆流を許容するか一方向を維持するかは状況によって変わるはずです。これに必要な費用は電力コストとして回収されなくてはなりませんので、需要家全体で負担することになります。ここ数年で見れば、目立った数字にはならないでしょう。私が言いたいのは、長期の普及策でPVが多くの地域に固まって設置されるのに対応する系統の調整に必要なコストが客観的で公平な数字に決まってほしいということです。もしバッテリーに貯める方法が採用されれば、PVの保有者にコストがかかりますから普及しないでしょう。系統で余剰分を受け入れるように対応する方が電力会社にとっても社会にとっても望ましいものですし、コスト的にも小さく済ますことができると思います。電力会社から見れば、系統に手を入れるのはできるだけ少なくしたいはずで、それは理解できます。だからといって、技術的な対応をしないのは、温暖化対応をするという目的に合致した方針ではないでしょう。ドイツで急速にPVが普及して世界一の設置量になっていますが、電圧上昇によって問題が起きているとは聞いたことがありません。ドイツの電力会社はPVからの電力を全量買い取る義務を負っていますから、配電系統の手直しで対応しているはずです。大量に設置されたPVの下流に、それに対応する普通の負荷があるように系統をつなぎ直すことで、逆流させないで一方向の流れを維持しながら処理することもできるだろうと思います。
私の思いこみもあるかもしれません。コメントを歓迎します。