三菱電機は、2012年8月から東京地下鉄東西線の西船橋変電所で実施していた駅舎補助電源装置(S―EIV)の実証実験の結果として、駅での消費電力を1日当たり約600キロワット時削減できる省エネ効果を実証したと発表している。この補助電源は、鉄道車両のブレーキ時に発生する回生電力のうち、近くを走行している車両だけでは消費できない余剰電力を、駅の電気設備に直接供給する装置。近く商品として投入する計画のようだ。
この地下鉄が使っているのは1500ボルトの直流。これを交流に変換して、通常の配電系統である6600ボルトに接続し、駅の照明や空調、エレベータなどの電気設備に供給する。回生電力を交流に変換しても、異常振動や高調波の影響なく交流系統に供給できることも確認。列車の地上信号などに対するノイズ影響もないことが分かったという。
この試みは面白いと思う。殆どの郊外電車も直流給電をしているから、予め設置しておけば、駅舎だけでなく他の施設、例えば公共施設などのように停電を避けたいところに結んでおけば、配電系統が停まっても鉄道の架線から電力を供給できることになる。これを拡大すれば、JR東日本のように自前の発電所を持っているところの場合、あるいは、新電力からの電力を使っている場合などに、特定の地域に電力供給を行う事業を始めることができるかもしれない。これから進展する電力事業の再編にもからむことだが。ここで使われている直交変換の変換効率も高いように見受けられる。それをさらに拡大解釈すれば、配電網の一部を直流にし、そこから一般の建物に交流に変換して供給することもできるだろう。すぐには無理だが、配電線の数も少なくなるし、送電損失も少なくなる。問題は直交変換トランスの信頼性だろうが、その情報はまだ得ていない。