効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

住宅メーカーの太陽熱利用

太陽光発電を住宅に取り付けることを売りにしているハウスメーカーデベロッパーは多いのですが、太陽熱利用を売りにするところがないなと思っていましたら、ガスエネルギー新聞にその実例が紹介されていました。補助熱源としてその地域のガス会社がガスを供給していることからの記事だと思いますが、これから同様なケースが増えてほしいものです。太陽で発電する場合には、エネルギー変換効率が、研究室レベルは別にして、商品として売られているものでは13〜17%ぐらいです。それに対して太陽熱を使ってお湯を作る場合には、そのエネルギー利用効率は50〜60%にもなります。しかも太陽熱給湯器の設備コストは発電に比べると大幅に安いのですから、もっと普及させることで化石燃料の消費を大きく抑制することができるのです。日本の家庭の場合、お湯として消費される熱の量で一番多いのはお風呂ですから、風呂好きの日本人にとって太陽の恵みを肌で感じる最善の方法ではないでしょうか。
紹介されていた例は、大和ハウスが埼玉県にある越谷レイクタウンに作った集合住宅500戸、戸建て住宅132区画の分譲で、一部完成していますが、最終的に完工するのは来年8月の予定になっています。この集合住宅500戸に、太陽熱利用システムを設置して、全体の給湯・暖房用に温水を供給するのです。これは日本でも最大規模のものだそうです。大和ハウスは、戸建て住宅も含めた街全体で炭酸ガス排出量20%削減しようとする意欲的な取り組みの一環として、このシステムを導入したのです。20%という数字は補助金が出る基準です。このハウスメーカーとしても初めての取り組みだそうですが、環境省補助金があるとはいえ、よく踏み切ったものだと思います。昨今の燃料価格の急上昇も追い風になっているでしょう。
集合住宅の屋上に76枚の太陽熱パネルがあり総面積約1000平米となります。ここで暖められたお湯(夏なら熱湯でしょう)は60トン規模の貯湯槽に蓄えられ、各住戸に給湯用、床暖房用として供給されます。曇りの場合など十分に温度が上がらないときには、共用部に設置した9台のバックアップボイラーを動かして補うのです。500戸の集合住宅の給湯・暖房負荷熱量の約14%を太陽熱パネルで賄う計算になっています。記事に出ていたお湯のフローチャートを見ると、お湯が直接風呂や給湯暖房に接続されていますが、風呂のお湯よりも暖房に必要なお湯の温度の方が高いので、多分各戸には高い温度のお湯が循環していて、風呂の追い焚きと暖房には熱交換機を通して必要温度のお湯を循環させているのでしょう。厨房やシャワーなどに使われるお湯は水と混合して適温にしますから、共通に循環しているお湯を直接使っている筈です。各戸では、普通のお湯は水量計で、風呂追い焚きと暖房に使った熱量はカロリーメーターで量り、課金されることになります。集合住宅を循環する給湯回路の断熱をよくしておかないと、無駄に熱を使うことになってしまいます。バックアップボイラーが9台あるのも、分散させて熱ロスを防いでいるのでしょう。
補助ボイラーにはガスが使われますが、各戸にガス配管はなく、キッチンはIHヒーターになっています。ガスは一括購入されていますから、ボイラー用ガス代を引き下げることにもなります。電気も電力会社から一括して安く購入し、各戸では一般の電気料金より5%安い単価で供給しています。
このような意欲的なプロジェクトが増えてほしいものです。このプロジェクトではデータも収集されるようですから、ぜひ公開して貰えたら有難いのですが。ずいぶん前にガスを燃料にしたこのような方式で給湯した集合住宅のケースで、熱量計の精度と耐久性に問題が出たことがあるのですが、技術開発でその心配はないと思いたいところです。