効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

ドイツの太陽光発電と系統

8月11日に書いた「再生可能エネルギーを受け入れる系統安定化」に、えちさんからコメントを戴いていました。質問と言ってもいいかもしれません。それは「いつも疑問に思うのですが、太陽光発電導入が急速に進んだドイツはどういった対応になっているのでしょうか?」というものです。
日本は太陽光発電の導入量で世界をリードしていたのですが、2005年の時点でドイツに追い抜かれたのです。発電された電力を一般電力より高い価格で長期に亘って購入することを電力会社に義務づけるという政策(Feed-in Tariff)を2004年8月に採用したからであることは、今や常識になっています。その高い価格は年次が下がると設備のコストの低下を反映させて下がるような仕組みになっていますが、買い取る期間が決まっているために(確か20年)、設置する人は投資の回収についてはっきりした計算ができ、必ず儲かることが分かるために設置が大きく促進されたのです。建物に附属する発電設備は電力会社の買取価格は毎年5パーセントずつ下がることになっています。電力社はこのコスト増を消費者全体に負担して貰いますので、普及が進めば、電気料金は上がります。一種の環境税を電力について課している形です。
発電された電力は系統に逆流(逆潮)しますから、電力会社は大なり小なり系統に悪影響が出ないように制御の仕方を変えなくてはならないはずです。それには当然コストがかかります。ドイツでどのように制御を変えているか具体的には分からないのですが、風力発電とは違って、太陽光発電についてドイツの系統に問題があるとされたことは聞いたことがありません。個々の設備の規模が小さいために、それまでも需要変動に対応するための制御と本質的に異なるところがないからだろうと思います。日本では、あたかも変動するのは太陽電池からの出力だけで、需要には全く変動がないかのような表現がされるのですが、それは、電力会社が行う意図的なマイナス広報ではないでしょうか。
昼間は晴天・雨天で発電量が変動するのは確かですが、一基が3〜4kWの規模のものが、天気が快晴れから雨に急に変わったとしても、ゼロになるわけではありません。たとえゼロに近くなったとしても、それは見かけ上その家の需要が急に増えたのと同じになります。2〜3台の家庭用クーラーの電源を一斉に入れるのと同じくらいの変動にしかならないでしょう。クーラーの場合の変動に電力会社が文句を言うことはないでしょう。それは既に折り込み済みの変動だからですし、売上が上がるものにいちゃもんを付けるはずがないからです。しかし、太陽電池は基本的に電力会社の売上を下げることになりますから、出力変動が系統に悪影響を与えると主張し、政府もマスコミもそのまま受け売りしているのだと思っています。
ドイツでは、2006年に83万キロワット(日本は約26万8千キロワット)、2007年の推計では110万キロワット(日本は約20万9千キロワット)、が系統へ新たに接続されています。07年末累計で381万キロワットになります。これが天候によって出力が変動するわけですが、ドイツ全土に分散していますから全部が同じ動きをするはずはなく、系統全体の制御に問題となることはないと考えられます。たとえ一部に問題が起きたと仮定しても、ドイツの送配電系統は周辺の国と繋がっていますから、国外へ一時的に流したり、受け入れたりして調整しているはずです。地域的な変動は電力需要変動への対応と基本的に同じ筈ですから、大きな設備変更をする必要はないはずです。太陽光発電の出力を系統に流すのには、インバーターを経由しますから、系統への影響が最小になるような規格になっているはずですから。
えちさんの疑問に答えられたでしょうか。