燃料電池開発情報センターのウエブで最新情報が出されたので通読していたら、横浜国立大学の太田教授が白金ではない素材を使った触媒を開発したと出ていた。部分酸化したタンタル炭窒化物(TaCNO)とカーボンブラックなどの導電材を混合したもので、高い出力密度を達成したそうだ。触媒調整を最適化することによってさらに触媒性能が上がる可能性もあるそうで、同教授は、「白金と同等の性能を目標としているが、現段階でも表面粗度を上げる工夫をすれば、原理的には実用化が可能だ」としているとのこと。
これがどこまで実用化、商業生産の段階まで開発が進むかどうかは全く不明だが、白金に代わるものはまず不可能と思っていただけに、このような可能性があるだけでも嬉しいことだ。白金と同等でなくても使用できる分野は多いだろうし、そのような技術があるということだけでも、これからの国際的資源争奪競争に影響を与えることもできる。貴金属、希少金属の重要性がこれからますます大きくなるのは確実であるだけに、このような研究開発が成功することによって、他の分野にも波及効果があるだろう。
いま最も実用化に近くなっていると言われる固体高分子型燃料電池は、自動車用、家庭用に使われるだけに、性能も勿論だが価格がどこまで下がるかが大きな要素となる。その最も大きな要素の一つが、発電に関わる触媒に白金が不可欠だということだ。もしこれに代替する触媒の可能性があるとすれば、将来の価格見通しも変わってくる。少し楽観的に過ぎるかもしれないが、技術進歩にはいつも意外性があるだけに、予想外の技術革新として実用化してほしいものだ。将来の水素社会実現にも重要なものだ。