これまでにも書いたことだが、エネルギー効率を上げるのにこれから膜の利用が拡大するだろう。たとえば、固体高分子型燃料電池の一番中心にある電解質膜の性能次第で発電効率が変わるし、寿命も影響を受ける。海水から淡水を作るのにも、以前は蒸留水を作っていたのだが、それが逆浸透膜を使って、ポンプで圧力をかけるだけで真水が作られる。その膜の性能が上がって水の分子を通すための通路の抵抗を引き下げられているようで、ポンプに使われる電力消費が下がっているそうだ。中東でよく利用されているが、マレーシアから水を輸入せざるを得ないシンガポールも、政治的な独立性を確保するためにも水の供給自立を図って、膜を利用した純水装置を建設し、下水の水までも再利用しようとしている。
環境問題で炭酸ガスの排出が問題になっているが、その炭酸ガスの分離にも高分子膜が使われるようになるだろう。最近、バイオガスにも炭酸ガス分離膜が使われるという記事を読んだ。バイオガスにはメタンの他に炭酸ガスが入っているために熱量が低く、そのままガスエンジンなどの燃料に使用するのがやりにくかった。いままでは、吸収液で炭酸ガスを吸着し加温することで炭酸ガスを放出するのを繰り返して炭酸ガスを除去してメタン濃度を上げるために、加熱のエネルギーが多くなる。それが、炭酸ガスを吸わせた吸収液を膜に通すことで炭酸ガスが取り除けるようになったそうだ。熱源が必要ないために、消費エネルギーを現行装置の半分にできるという。商品化は来年になるそうだが、自分も関係するプロジェクトに採用できれば良いなと思っている。
これから水素社会になると良く言われるが、純度の高い水素を作るのにも膜が活躍するだろう。このような膜の技術は日本が最高水準にあると言われている。地球温暖化防止に膜の機能をトータルで高めて貢献してほしいものだ。