効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

中東諸国と太陽電池事業

アラブ首長国連邦(UAE)の政府系機関であるアブダビ未来エネルギー公社は、太陽電池製造装置最大手の米アプライド・マテリアルズ(AMAT)の技術を導入し、シリコン薄膜太陽電池の量産に乗り出すと電気新聞が報道しているのを読んだ。中東諸国では最初のケースである。ドイツ中部の都市エアフルトアブダビに工場を建設してドイツでは09年の第3・四半期、アブダビでは10年第2・四半期から生産を開始するが、総額20億ドル(約2100億円)というから大規模な設備となるはずだ。両工場を合計した当初の年産能力は21万キロワットだが、14年には100万キロワットの太陽電池を生産する計画だそうだ。
中東諸国全体に言えることだが、石油という資源の有限性を強く意識し始め、それに変わる産業を育成しようとしている。その一つが太陽電池の製造なのだろう。ドイツにまず工場を作るのは、太陽光発電に有利な市場が政策的に作り出されているからに違いない。中東諸国は砂漠の多い国で日射も強いから、国内に設置すれば石油に変わるエネルギーを製造することにもなる。太陽電池セルの製造には、かなりのエネルギーを消費する。当初は自国の石油資源を使って発電した電力で製造するが、次第にその一部を太陽光発電からの電力も充当するようになるだろう。とすれば、自国の石油資源の枯渇時期を延ばす効果も出るはずだ。そして、価格が相対的に低いエネルギーで製造する太陽電池セルの価格は世界的に強い競争力を持つだろう。このUAEの計画を皮切りにして、中東に太陽電池製造事業が集中するかもしれない。そうなると現在日本が高い市場占有率を持つ太陽電池市場も、日本のメーカーがこの地域に進出しない限り競争力を失うかもしれない。いままでは半導体製造の高い技術を応用して太陽電池セルを作っていたのだが、その技術が次第に汎用製造設備に組み込まれるようになって、設備さえ導入すれば作れる時代に入っている。すぐにではないにせよ、日本のメーカーも戦略を転換しなければならないかもしれない。