効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

アフリカと蚊帳

昨日たまたまアフリカについて述べたが、今日も別の側面のアフリカについて書きたい。自分も関わっているユニセフ活動にも関係していることだが、アフリカで特に深刻なマラリアの感染を予防する蚊帳「オリセットネット」を開発した住友化学は、その技術をタンザニアの企業に無償供与して03年から現地生産している。これは、家庭用殺虫剤を練り込んだ合成樹脂の糸を編んで作ったものだ。蚊帳を薬剤に浸す従来型と異なり、殺虫剤が少しずつ染み出て蚊を殺すため、何度洗濯しても最低5年は効果が続くそうだ。除虫菊の成分なので人体には影響がなく、しかも一張りが5ドルで作れる。
住友化学コロンビア大学の実験に協力して33万張りの蚊帳を寄付して使ったところ、マラリア原虫保持者が55%から1年足らずの内に13%に減り、患者数も半減したという報告があるという。病気が治ると農作業に戻れるために、荒れていた畑も元の緑を取り戻したそうだ。住友化学米倉弘昌社長がインタビューで述べているのは、年間生産量がタンザニアで100万張り、中国、ベトナムを合わせて3200万張りだという。タンザニアでは3200人を雇用していて、周辺の雇用も含めると6000人ほどになるらしい。ナイジェリアでも新たに生産を始め、2000万張りを目指しているという。
注目すべきは、この事業は慈善ではなく、利益を出して事業を持続させることを眼目にしているということだ。技術を移転し、雇用を創出し、支援先の経済が自立できるようにすることだと米倉氏は述べている。その通りだと思う。
昨年の秋に奈良で行ったユニセフの広報活動の中で、子どもたちに蚊帳を舞台で張って貰って、ユニセフもこの蚊帳を調達してマラリア防止活動をしていると訴えたが、日本の子どもたちにとっては蚊帳自体が珍しいものだったようだ。昔、蚊帳に入るときには、ばたばた扇いで蚊が中に入らないようにしたと説明したが、その意味が分かった子どもは少なかっただろう。
地球温暖化で日本本島でもマラリア蚊が冬を生き延びる可能性が高くなっているそうだから、この話しは決して他人事ではない。一張りのコストから見ると、僅かの募金で蚊帳を何張りかアフリカで貸与できる。もっと社会に訴えないといけないと改めて思った次第だ。