効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

炭酸ガスの分離

いろいろな燃焼ガスから炭酸ガスを分離する技術が世界的に開発されている。問題は、分離プロセスに必要とするエネルギーの量が多ければ、そのエネルギーが再生可能エネルギーから供給される時代が来ない限り、それに応じた炭酸ガスが排出するのは避けがたい。たまたま今日の新聞に、炭酸ガスだけを効率的に通過させる分離膜が商品化に近いという記事があった。特殊な金属塩とゲルを混合した膜によって、従来の10倍の速度で分離できるという。開発された膜は厚さ100マイクロメートルで、圧力をかけるとCO2が膜内に浸透して水に溶け、金属塩とくっついて膜の外に排出される仕組みである。CO2と選択的に結合する特殊な金属塩を開発したことからこれが可能になっている。触媒反応には189度の温度が必要だが、その温度で98.5%以上の回収ができることを実証している。
当面の目的は、燃料電池の燃料として使用する水素を製造するときにできるCO2を除去するのに使うことのようだが、膜の場合そこで消費されるエネルギーは多くないから、量産されてコストが下がれば、バイオガスに含まれる炭酸ガスを除去することによってガスエンジンに使いやすくしたり、規模を大きくして火力発電所から排出される排気中の炭酸ガスを回収するのにも利用できそうだ。
膜に関する日本の技術は優れている。水についてみても、海水の中の塩分を除去する膜の技術は世界トップで、砂漠で水が絶対的に不足している中東諸国で海水の淡水化に採用されて住民の飲料水を確保している。開発された当初はコストがかかって実用化は難しいと言われていたが、現在ではその応用範囲は大きく広がっている。地球全体に淡水が不足する時代が来ると言われている今、淡水化に使われる膜技術で日本は世界に貢献できるだろう。
これと同様にもしこの技術が普及するきっかけがうまくできれば、最初は燃焼に使うガス中の炭酸ガス除去という規模の小さいものへの応用から進展するとしても、もう少し先を見ると地球温暖化にブレーキをかける重要技術となるかもしれない。ついでその収集した炭酸ガスの保存技術だが、使用済み核燃料の保管よりもリスクは小さいと思う。漏れたとしても全体が一度に漏れるとは考えにくいし、人体への影響はその時点では無視できる位の筈だからだ。