効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

奈良の若者の底力

1月12日付の奈良新聞によると、県立王寺工業高校の無線部に属する学生14人が、僅かな風でも効率的に稼働する発電用風車を研究製作し、高校生による科学技術コンテスト「第5回ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ」で、2位にあたる科学技術政策担当大臣賞と、JSコーポレーション賞をダブル受賞したということだ。奈良の住人として、そしてエネルギーと環境を専門にしているものとしては嬉しい限りだ。
風力発電でも数百ワット〜数キロワットの小型のものは、吹く風も比較的弱い住宅地の近くに設置されることが多いめに、十分な発電ができないのが通例だ。小型風力発電機にはプロペラ型と羽根が縦に並んだ型のものに大別できる。プロペラ型は風の方向にプロペラが正対したときに一番発電できるが、風が乱れやすい住宅近辺や山間部では風の方向に追随するのが難しい。一方羽根が縦に並んで円周上に取り付けられているものは、風がどちらの方向から来ても回転できるし騒音も少ないが、微風では安定して回転させるのが難しく、プロペラ型よりも発電を開始できる最低風速が大きくなる。学生達は縦型(ジャイロミル型)の風車を使って風洞実験をして実験と試作を重ねたそうだ。風洞まで自作だから素晴らしい。
その結果、取り付け角を変動させられる可変翼のほうが従来方式の固定翼に比べて風を最大限に利用できることを解明し、風向計の原理を利用して羽根とカムを連動させることで固定翼に比べて約7倍の起動力を得ることに成功したという。静止しているものを動き出させるのに必要な力を少なくて済むようにできたということだ。風速1〜2メートルでも発電できるとのこと。5月に米国で開催される国際学生科学フェアにも出場がほぼ確実で、優勝も狙えると予想されている。
商用化されたものの中には、風が吹き始めたときにバッテリーでモーターを回して羽根を回し出させてやる形式のものもあるほどだから、王寺工業高校の制御方式が外部エネルギーを使っていないのは格段に優れていると思う。
奈良は日本の歴史最初の首都である。人が多く集まるところだから、風雨による災害の少ないところとして選ばれたはずだ。それだけに常時は弱い風しか吹かないが、その風でも回ってくれて1キロワット前後の発電が可能になるとすれば、そして、それを電力会社の系統が接続を許可してくれれば、一般住宅で使う電力の何割かを賄うことができるだろう。その場合多分蓄電池とインバーターを使わないといけないためにコストが上がるだろうが、故障が少ないものを開発できれば、商品として市場へ出すことも可能だろう。2月中には同校の玄関周辺に設置されるそうだから、是非見に行きたいと思っている。グラスファイバー製1.2メートルの羽根3枚を持つ高さ5メートルの風力発電風車を製作していると奈良新聞は書いているが、設計発電出力がいくらか分からないのは残念だ。しかし、公開されるときには分かるはずだから、楽しみは後に残す方が良いのかもしれない。