E Sourceから来たレポートを読んでいたら、米国の港で停泊する大型船舶に、陸から電力を供給しようとする計画が拡大しているというものがあった。船舶が埠頭に係留されている時には、発電用のディーゼルエンジンを駆動して、船内で必要な電力を賄うのが普通であるが、これが港の大気汚染の原因の一つとなり、港湾で働く人や周辺住民に健康被害を与えているのを改善するためだという。これは英語でコールド・アイロン(Cold Ironing)と呼ばれているようで、もともと米国海軍が長期停泊のときの経費削減の目的で何十年も前から行われていたのだが、商業港でこれが始まったのは2001年からのことのようだ。特に大気汚染にうるさいカリフォルニアで始まり、全米に広がると予想されている。
この実現には電力を船に送る設備投資が必要だが、投資額1ドルで3〜8ドル相当の大気汚染が原因の健康被害をなくすることができるという。こ船をプラグインするこの方式が広がると、電力会社にとってはおいしい話となる。止まっている間はほぼ一定の電力を消費するし、その規模は1隻あたり1万キロワットになることもあるからだ。電力のベース負荷を押し上げることになるので、電力会社の発電設備の稼働率を改善することになる。また、効率の悪い船舶用発電機よりも効率が良いために、炭酸ガス排出量も大きく引き下げることができる。
これと同じようなアイデアが東京電力によってビジネスとして行われ始めている。高速道路で長距離トラックが長時間駐車するトラックステーション7箇所に、停止している大型トラックに電力を供給する設備を50基設けて、休憩中も空調や冷凍設備を動かしておくためにエンジンをかけっ放しにする代わりに電気で駆動してもらおうというものだ。パーキングエリアの大気汚染を防止できるし騒音もなくなる。ただ、トラックにこのための受電設備を取り付けるのに40万円ほどかかるというが、東電によれば、停止中にアイドリング燃料を使わないために数年でこの投資は回収できるという。トラックが消費する電力は船に比べれば小さいので、電力会社から見て大きな負荷になるのかどうかは分からないし、船と違ってドライバーの休憩が終わるとすぐ動き出すのでなんとも言えないが、均してみればベース負荷とはなるだろう。エネルギー消費効率が高まることは確かだし、公害防止効果も目に見える形で生まれるだろう。
船舶にしろ大型トラックにしろ、このような形で電力事業が環境保全に貢献できるというのはうれしいことだ。知恵を出せばもっと応用できる事例があるのではないか。