効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

塗料工程の有機排ガスを燃料に

米国で溶融炭酸塩電解質燃料電池のメーカーであるFuel Cell Energy(フューエルセル・エナジー)社からメールでプレスレリースが入った。同社の300kWシステムがカナダのオンタリオ州オークビルにあるフォード社の製造ラインに設置されることになったという内容だ。
興味を惹いたのは、その燃料電池システムが、エナメルをベースとする塗装の工程から排出される未利用の塗料や有機溶剤からなる揮発性有機化合物(VOC)を多く含んだガスを燃料に使うということだ。これまでは多分燃焼させてそのまま大気中に放散されていたものを燃料に使って発電するのだから、かなりの投資をしても引き合うのだろう。当然のことかもしれないが、これにはカナダ政府やオンタリオ州政府の代替エネルギー開発促進のための補助も出されている。
燃料として使うためには、燃料電池に障害を与える硫黄分などは除去されなくてはならないが、その後この排ガスを改質して水素にする。溶融塩タイプの場合一酸化炭素も燃料として使えるために、一酸化炭素が障害を与える固体高分子電解質タイプほど改質に気を遣わなくても良いはずだ。塗装工程で発生する揮発性有機化合物の処理には、多くのメーカーが頭を痛めているはずで、このプロセスがうまく働くことが実証されれば、Fuel Cell Energyの溶融炭酸塩燃料電池の市場を大きく拡大することになるだろう。2008年に入ると稼働を始めるそうだが、うまく作動することが実証されれば他のフォードプラントにも設置されるという。300kWというと自動車製造プラントの電源の一部としても十分使える規模のもので、自家発電として商用電力系統のバックアップにもなるから、他の自動車メーカーや家電メーカーも関心を寄せるかも知れない。来年に入ってからの稼働情報が入ってくるのが楽しみだ。