効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

炭酸ガスの利用

諸悪の根源は炭酸ガスであるような雰囲気だが、炭酸ガスそのものが悪いわけではなく、人間社会が自然のバランスを崩すほど多量の炭酸ガスを作り出したことが悪いのだ。いま炭酸ガスを排出する量を減らそうとするための技術開発が進められているが、高効率化によって排出量を減らす以外には、炭酸ガスを何かの形で捕まえるしかない。ところが、捕まえた炭酸ガスを利用する道筋がなければ、膨大な炭酸ガスをどこかに溜めておかなければならないのだが、ただ溜めておくだけでは価値が生まれてこないし、また漏れてくることもある。
関西電力の子会社環境総合テクノスが、炭酸ガスを溜めるときに価値を生み出す方法を考案し発表した。炭酸ガスと窒素を交互に地価の石炭層に圧入して、石炭層内にあるメタンガスを取り出すことに成功したという。北海道夕張市の石狩炭田の地価900メートルに残っている石炭層で昨年度から実証実験をしていたデータを公表した。
石炭はメタンガスよりも炭酸ガスを吸着しやすいそうで、炭酸ガスを圧入すると、メタンガスを追い出して吸着される。結果としてメタンガスが採取できるのだが、同時に窒素を入れると、石炭を収縮させる効果があって、圧入できる炭酸ガスの量が増え、メタンガスの採取量を向上させることができるのだそうだ。今回の実験では一日に都市ガス換算で500世帯(約500立米)が利用するだけのメタンガスが得られたという。この概要はhttp://www.kanso.co.jp/kankyo_j/k_kenkyu/co2_0.html で分かるが、ここでは炭酸ガスの圧入効果だけを記述していて、窒素を入れることがメタン採取効率を高めることについては触れられていない。新しい考案だろうが、経済性の向上にも有効なものだといえる。
その他に、千代田化工が、炭酸ガスとメタンの混合物から合成燃料を得る手法を開発している。化学方程式で見ればこれは可能なはずなのだが、いままでは高価な触媒を高温で作用させなくてはならず経済性が出なかったものを、新しい触媒を開発することによって合成反応を簡単に進めることに成功したのだそうだ。ガス田で採取される天然ガスは、多量の炭酸ガスを含む場合もある。その場合、炭酸ガスを分離してもとのガス田に再圧入している。もしこの技術によって圧入の必要がなくなり、有用な合成燃料が得られるとすれば、炭酸ガスの有効利用となる。ただ、この合成燃料も化石燃料であることには変わりはないのだが、もし、バイオマスからできるメタンガスと炭酸ガスで合成燃料が経済的に製造できるまでになれば、たとえば石炭火力発電所から回収した炭酸ガスの一部でもこれに利用できることになるだろう。実現までに時間がかかるかもしれないが、新しい方向が示されたという意味が大きいように思う。