オーストラリアがこの7月1日から排出権取引を導入する。最初これを知ったときには「本当?」と思った。石炭、天然ガスが豊富にあって、大量に輸出もしているから、自国の首を絞めるのではないかと考えたからだ。しかし、化石燃料資源を国内に豊富にもっているからこそ、炭酸ガス排出を抑制するには、この導入が避けられないというのがオーストラリア政府の方針のようだ。最初の3年間は炭素価格を固定する、ということは需給によって価格が当面は変動しないということだ。また、炭鉱、発電といった規制対象の産業には無償で排出権を割り当てるなどによって、急激な変化が出ないようにしている。2015年以降は、この価格に下限と上限を設けた市場ベースの変動制に移行するという。長期的には石炭産業に大きな影響を与えるのは確かだろう。ただ、この国には老朽化した石炭火力発電設備が多いようで、これを高効率な新鋭設備に変えたり、排出される炭酸ガスを捕捉して貯めるカーボンキャプチャー技術の実用化するのを促進することで、発電事業から出る炭酸ガスの排出を下げていこうとしている。炭鉱から出るメタンについても、これに課税することによって、炭鉱由来のメタンで発電することも促進するようだ。他の資源輸出国との競争力を維持することは課題となるし、オーストラリアから石炭、天然ガスを大量に輸入している日本にとっても、この排出権取引開始の影響を大きく受けると覚悟しなくてはならないだろう。一方電力事業は、20%のRPS達成を義務づけられているから、これから太陽や風力からの電力も増えるだろう。炭素価格は発電時に炭酸ガスを排出しない再生可能エネルギー導入へのインセンティブとなる。日本がこれから環境税をどのように導入するかの参考になるだろう。