効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

休耕田を利用してバイオエタノールを

ガソリン代替燃料になる植物由来のバイオエタノールに注目が集まっている。原理的にはどのような植物でもエタノールにできるが、現時点ではトーモロコシを原料とするものが主流である。ところが、トーモロコシを主食にしている民族も多いし、いろいろな食品の素材であったり、畜産向けの飼料として広範に使われている。ガソリン代替としての効果を大きく出すためには、まとまった量のトーモロコシを使用しなくてはならないが、余っているものではないから現在生産されているものが今までとはまったく違った使用分野に振り向けられることになる。そのため、投機的な動きも加わってトーモロコシの価格が大きく上昇し、世界の台所に影響を与えようとしている。さらに、新しくトーモロコシの作付けをする動きも拡大し、それによって森林や草地が削られる面積の増加を促進し、新たな環境破壊を生むとも心配されている。
それに対し、日本が構想している休耕田を利用して米を生産し、それをバイオエタノール用に使うという方策は、トーモロコシとは違う意味があるかもしれない。そこで育てる米は、品質的に食用には向いていないが収穫量が多いものとするということだ。研究者の報告によれば、作付可能面積は136億平米で、食糧用米の1.7倍の収穫が得られるとすると、1万平米あたり10トンの収穫で、554万キロリットルのエタノールが供給できるとのこと。この方式の場合、休耕田を元の水田に戻すのだから、環境を元に戻すことになる。さらに保水力を増やすことになるから環境改善になるとも言える。ただ、単位あたり収穫量を増やすことが求められるために、食用ではないことを前提に農薬や化学肥料が多量に投入されるようであれば環境破壊につながる怖れはある。少なくとも農薬の使用を許さないものにしないと、地域の生物に対する影響は避けられないだろう。
普通の食糧用米の生産費は、引渡し価格で1キログラム200円以上だが、エタノール生産用の米では20〜30円が目標だという。いかに収穫量を増やすとしても生産性を10倍近く引き上げることはまず無理だろうから、栽培方法や品種改良は当然のこととしても、補助金などの政策的支援策が必要になるのは確実だ。ただ、休耕田にするために補助が出されていたのに比べれば意義あるものになるとも言える。また、地域や地球の環境を改善するという環境価値に対して補助金を出すとすれば、自然エネルギーに対する補助と同じ意味合いになる。補助策で何とか市場性を出すとすれば、それは国民がお金を出して炭酸ガス排出を抑えるのだから一種の環境税になるのかも知れない。
実現までにはエタノール製造プラントの建設や集荷輸送体制、他への流用の防止など、考えなくてはならないことが多いが、地域環境という側面から見る限り、大きな障害のない方策であろう。農業振興にもなるにちがいない。