効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

柏崎刈羽原子力発電所の停止に思う

新潟沖を震源地とする今回の地震で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所が緊急停止したことは、いままでの事例と異なり点検で安全を確認して再スタートとは行かない可能性が高い。この発電所を建設するときに想定した揺れ強度の2.6倍が記録されていると報じられているということは、ある建築設計士が強度計算を操作して震度6には耐えられない建物を設計したのと同じことになるからだ。原発設備自体の強度が十分ではなかったということだから、構造設計自体を一から見直す必要があると同時に、今回の地震で何かの破断が起きていないかどうか、細部に渡るまでチェックしなければならないというのが理屈だろう。建築士の場合には建物を補強したり建て直したりすることが要請され、その間使用することが認められなかった。これと同じ状況にあると言える。
この強度問題は、この発電所原発だけに限定されるわけではない。この柏崎刈羽発電所は、本来このような地震は起きる可能性のない場所に設置されたはずだから、同じことが他の原子力発電所に当てはまらないという理屈は通らないことになる。普通の市民感覚からすれば、一度全部の原発をチェックし直してほしいということになるが、それがまた難しい話となる。ずさん建築士の場合には、強度不足の建物はすべて使用禁止になった。ところが、原子力発電所の場合そうは簡単に行かない。これから夏に向かって電力需要のピークが大きくなるのに備えて、原発だけでなくほとんど全ての発電所が稼働することができなければ電力供給が追いつかなくなる。ということは、もし全ての原子力発電所を停止させるとすれば、その不足分相当だけは停電させるか強制的に需要を大幅に抑制しなければならない。このような状況は社会へ与える影響が大きすぎるために、強度確認が終わるまで原発を停止という安全重視の方策を実施することはできないだろう。欧米の原発のように、地震の起こらない地盤に建設されているものがあれば稼働させるという選択肢はあるが、日本の場合、日本列島全体が地震帯の上にあるのだから、今回と同じような地震が他の原発立地地区を襲わないとは誰も言えない。どうすれば良いのだろうか。
典型的なジレンマのケースになる。