北米での天然ガス資源の開発が十分に進まなかったために需要に対応できなくなり、価格も高騰し、また、大きな変動をするようになっている。そのためLNGの輸入基地の新規開設が相次いでいて、輸入量が増えてきている。それに伴って興味あるレポートがE Sourceから出された。ガス事業者に対する警鐘のようなものだ。
LNGは天然ガスを摂氏マイナス160度ほどに冷やして液体にしたものである。その製造過程で、原料ガスの中から抜き出されるものもあるし、ガス田によって成分も異なるために、輸入したLNGを元のガスに戻しても、その特性が輸入地域で従来から使われていた天然ガスのカロリーとか燃焼速度といった特性とかなり違う場合もあり得る。特性の差があるガスを従来の天然ガス供給ネットワークに混入すると、ユーザーの所に届いたときに、従来のものと違った燃焼をする可能性があり、極端な場合には、米国ではまだ広く使われている自動点火用のパイロットバーナーが消えてしまう可能性もあるという。
日本の場合は、LNGをガスに戻して送出するときに厳密な調整を行っているので、このような問題は起こらないが、組成が異なる国内のガス田からの天然ガスを使ってきた欧米では、特性の差にあまり神経質ではなかった。ガスを燃やす機器の方で、ガスの組成がある程度変動しても良いように柔軟性を持たせているからだ。そこへ組成の差が大きいLNGが入ってきたために、その差に対する準備ができていない事業者があるということのようだ。
日本でも、食品廃棄物や畜産糞尿をメタン化したガスを都市ガスに使おうという考えもあるようだが、主成分がメタンだからといっても、単純に従来の天然ガスネットワークに混入させるわけには行かないということと共通するものだと言えよう。