日本エネルギー経済研究所のオンラインセミナーで、ジョナサン・スターン ロンドン大学教授が、LNG市場分析の第一人者として講演したということを知って、自分がロンドンに赴任していた頃の事を思い出した。その頃から彼とは親しくしてもらい、彼が書いたエネルギー市場に関する書籍を翻訳したこともある(エネルギー市場の競争条件)。 当時は王立国際問題研究所、俗称チャタムハウスの研究員だったが、後にロンドン大学に移ったのだった。
彼が今回警鐘を鳴らしたのは、クリーンなエネルギーとして評価されるLNGについてだ。LNGの主成分であるメタンは、LNGの利用分野においてはごくわずかしか排出されないとされるが、生産・輸送の過程では放散・漏えい等が一定程度生じているとされる。ここでの問題は、メタンの地球温暖化効果が炭酸ガスよりはるかに大きいということだ。ただ、メタンリークはLNGに限ったことではなく、天然ガス輸送パイプラインからの漏洩の方が全体の漏洩量としては多いかも知れない。また、輸送前の天然ガスを地下から取り出すときや採掘の現場からも漏洩は避けられず、このシステム全体を眺めると、温暖化効果の大きさは炭酸ガスに匹敵するものである可能性があると彼は指摘し、現状のままだとLNGは市場から退出を迫られる怖れがあると述べたようだ。そして、世界のLNG需要の約6割を占める日中韓が共同して、欧州並みの排出抑制を生産者側に求めてはどうかと提案したようだ。
欧州委員会はグリーンディール政策の一環として昨年10月、温室効果ガス(GHG)の1つであるメタンの排出を抑制する戦略を打ち出した。域内の排出を抑制する法律を2025年までに制定する方針になっている。メタンリークを大幅に削減できなければ、ガス事業そのものが存続できなくなる。米国の一部で始まっている、新規建物にガス配管を接続するのを禁止する施策が、世界的に拡大する可能性はある。日本のガス事業にとっても早期に対応策を講じなければ、市場は急速に縮小することは確実だろう。
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