効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

大規模集中型発電所のリスク

まさに「スモール・イズ・プロフィタブル」(省エネルギーセンター刊)でエイモリー・ロビンスが述べている事態が起きた。今日命令によって停止となった北陸電力志賀原子力発電所一号機は出力54万キロワット。そのトラブルの原因は人為的なミスであることは明らかで、いままでに他の原発で起きたことも全て人のミスが介在しているといって過言ではなかろう。原子力発電所は、数十万キロワットから100万キロワットという大規模なものばかりだから、しかも、ベースとなる発電所として常時稼働していることを前提としているから、長期にわたって止まると、電力供給の安定性に影響を与えるだけでなく、財務的にも大きなマイナスが発生する。だからこそ稼働を無理にでも続けるために報告しないという判断が優先する。
分散型発電でもエンジンやタービンを使ったコージェネレーションなどの発電設備は、たとえ一基が想定外の停止をしてもせいぜい数百〜数千キロワットが失われるだけだ。そして、余程の天変地異でもない限り、何十機、何百機が一斉に停止することは起こりえない。いわんや太陽光発電風力発電の故障率は極めて低い。ということは、分散型発電装置を一まとめにして考えた発電量激減のリスクは非常に低いということだ。日本コージェネレーションセンターのデータでは、日本全体で05年度末に900万キロワット近い発電容量がある。
原子力発電の発電単価は安いと言われる。しかし、投資の判断をするときに、不測の停止をしたときの損失を投資リスク計算に入れた場合、果たして安いと言えるのだろうか。また、建設には10年以上かかるのだから、その間に起きる想定外のマイナスのリスクを入れると、投資回収の確実性はますます小さくなっていく。だからこそ政府のさまざまなバックアップが必要なのだろう。
分散型発電設備はその殆どを電気事業者以外が保有している。だから、電力会社から見ると、売れるはずの電気という商品をその分だけ売れない、いわば横取りされているということになる。だからこそ、分散型発電が普及しないように様々な障壁を課してきた。いま見られる典型的障壁は風力発電に対するものだが、コージェネレーションの黎明期にも同じような技術的、制度的障壁がいろいろあったのだ。
エネルギーの殆どを輸入に頼る日本が本態的に持つ地政学的リスクも考慮に入れる必要があることは確かだが、電力供給の安定性を考えたとき、電力会社自体がもっと分散型発電を系統の一部として取り込むことを考えるべきだと思う。そのためには、送配電系統の設計思想も変えなければならない部分もあるが、投資リスクにもっと配慮して、発電容量の増強をできるだけ大型のものでという発想から脱することが必要ではないかと考える。
これは「スモール・イズ・プロフィタブル」の言わんとすることを、極めて簡略化して述べたもので不徹底なものだ。ぜひ本文を読んでほしい。目からうろこが落ちる人も必ず出るはずだ。