効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

ベトナムに大規模風力発電

1990年だったと思うが、海外からの旅行者を受け入れるようになって間もなかったベトナムを1週間ほど訪問したことがある。その時に日本が敗戦後に経験したような停電に遭遇した。その頃から見るとベトナムの近代化は大幅に進んでいるが、発電が需要に追いつけないことが依然として課題である。そして新規の発電所は石炭を燃料にするものが多いはずだから、地球温暖化の影響を受けやすいベトナムとしては二律背反的状況に置かれていると言えるだろう。
今日、ベトナム最大規模の民間企業グループであるサイゴン・インベスト(SGI)は同国南部のビントアン省で大規模な風力発電プロジェクトに乗り出すと新聞が報じている。総投資額は4億4000万ドル。発電能力は20万キロワットで、国内最大規模の風力発電プラントになる見通し。サイゴン・タイムズ紙(電子版)が報じたのを日経の夕刊が転載している。ベトナムでは経済成長に伴い電力不足が深刻化しており、原子力発電所や石炭火力発電所などの建設が多数計画されているという。
当面は20万キロワットだが、ビントアン省では2015年までに150万キロワット分の発電能力を持つ風力発電プラントを整備する計画で、中央政府に認可を申請している。これだけの風力発電設備を系統につなげば、よく日本で言われる風力発電出力の不安定性で送電系統の制御が難しくなるはず。150万キロワットは09年末で1790万キロワット(東北電力と同じ程度)とされるベトナムの総発電容量から見ればかなり大きい。原子力発電は建設に時間がかかるから急場のしのぎにはならない。風力発電は2〜3年で建設ができるから、絶対的に電力が不足しているベトナムでは系統の不安定さが増えたとしても意に介しないのだろう。日本ならこれだけの容量を簡単には受け入れてはくれない。日本がいま持つ風力発電は200万キロワット弱であることを考えれば、ベトナムの思い切りに感心する。というより、日本全体ではなく自社の事業区域のことしか考えない日本の電力業界の消極さが嫌になる。