効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■船舶の排ガス規制

 IMO(国際海事機関)が、一定規模以上の外航船に燃料油の消費実績を収集し、報告を義務付ける新規制が世界規模でスタートしたが、来年の1月から船舶用の燃料油の硫黄分を0.5%にまで低減させるというのは、海運業者にとっては対応が難しい規制だと報じられている。現在使用している硫黄分を多く含むバンカーオイルを一挙に0.5%にまでしなければならず、それに向けた対応策には幾つかのものがあり、収益確保のためにどれを採用すべきかが大きな課題となる。この転換にはどの方策をとっても大きなコストがかかることは確かだ。

 現在使用している船舶に硫黄除去装置を取り付けるのが一つだが、エンジンの種類によっては取付が難しいものもある。低硫黄バンカーオイルに切り替えるとしても、その製造量がまだ対応できるほど大きくなっていないのも課題。また、古い燃料タンクにこの低硫黄燃料を入れても、タンクを洗浄していなければ、側壁に残る古い油から硫黄分が入ってきて規制に引っかかるのは確実だそうだ。しかも完全にクリーニングする技術もまだ確立されていない。

 新しい燃料、たとえば、LNGを燃料とする船を新しく作る、あるいは現用中のものにLNGタンクを付けるということも考えられるが、LNGを供給できる港はまだ世界にも殆どないため、すぐには対応できない。電動船にすることも、まだ技術が確立されていないし、大型船には無理。

 いずれにしろ、外洋船舶の運航コストが大きく上がることは確実で、対応に失敗した海運事業者にどのようなペナルティーが課されるかも具体像がまだ見えていない。しかも硫黄分の規制に続いて、CO2の排出についての規制もいずれ発動されるだろう。今後の展開を見守る必要がある。

 

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■IEA、再生可能エネルギーに関するレポート発表

 先週IEA(国際エネルギー機関)が、Renewable 2018という標題の、再エネに関する年次報告を発表したのを入手した。211ページのpdf版だが無料ではないので多少躊躇はしたが。毎年購入しているから今年もということだ。Analysis and Forecasts to 2023 と副題にあるように、2023年を視点に入れた現状分析。最初にあるサマリーを読んでいるが、全部を読み通す体力はない.。だが、何かを調べたいときには目次を辿れば分かるし、それに掲載されているデータやグラフが自分の考えをまとめるのに極めて有効。今年の分析と予測では、バイオエネルギーに焦点が当てられている。というのは、風力や太陽光発電が急速に伸びているが、運輸関連の燃料に依然として大量の石油が使われていることを問題視している。バイオマスの利用については、薪炭などの旧来から燃料に使われてきたものは除外したものをモダンバイオエネルギーと定義して算定している。それによれば、モダンバイオエネルギーは、2017年に消費された風力、太陽からの再エネの4倍に相当する量をを占めているが、殆どが暖房用や工場などの燃料としてのもので、運輸用の燃料に混入されるバイオエタノールバイオディーゼルの量はまだ少ない。IEAはこれから2023年に向けた再エネの増加に貢献するのはモダンバイオマスになり、30%の貢献をすると予測している。

 2017年には、世界の再生可能エネルギーの増加は5%以上。最終エネルギー消費全体の増加の3倍早いスピードで伸びている。世界の電力向けでは、風力、太陽光、水力発電の貢献が大きく、全体の電力消費量の伸びの半分を占めている。また、世界のエネルギー需要に対応する再エネのシェアは2023年には12.4%となり、2012年から2017年迄のシェアの伸びよりも大きくなると予測している。伸びの大きいのは電力分野で、2023年の世界の総発電量の30%になるとしている。問題は運輸部門への再エネ導入で、政策的な支援が十分に及ばないために、この分野での伸びは大きくならない。国別で見ると、ブラジルがエネルギーミックスに占めるグリーンエネルギーの比率は最大だが、グリーンエネルギーの増加にもっとも貢献しているのは中国。ブラジルは2023年の同国最終エネルギー需要のほぼ45%というシェアを占めることになるが、その中核は運輸・工業部門でのバイオエネルギー消費で、電力部門では水力が中核となる。一方中国では、政府の推進施策が強力に進められ、絶対量で見れば想定期間内では首位を走り、EUを追い抜いて再エネ消費が最大となるとしている。

 ここで気になったのは最近ブラジルのアマゾン地域で起きた大規模な森林火災のことだ。世界の温暖化ガス吸収に大きく貢献してきた熱帯林が多く失われてしまったことが、この予測には入っていないので、ブラジルに関する分析が来年どうなるかが心配となる。

 

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■スイスが2050年迄にネットゼロにすると宣言

 スイス政府が2050年迄に地球温暖化ガスの排出をネットゼロにすると宣言した。この28日に報道各社から報じられているが、日本の新聞では見かけなかったから、報じられたとしても大きい記事ではなかったようだ。これは同国で排出される温暖化ガスと吸収される温暖化ガスをほぼ同じにするということで、温暖化ガスの収支をゼロにする政策を推進するということだ。CO2の排出を70~85%削減しなければならない。このような国の方針として示されたのは、英国、フランス、スイスに続いてのものとなり、ドイツは今年中に同じ方針を示して立法化することになっている。日本にはまだその動きは見られない。ネットゼロを達成するためには、経済政策を大きく変えなくてはならず、化石燃料の使用をほぼ止めなくては達成できないもので、簡単な話ではない。だが、工業化社会になる前の地球の平均温度よりも1.5℃上昇に食い止めるにはどうしても達成しなければならないことなのだ。

 ネットゼロにするためには、電力だけでなく、運輸用、工業用のシステムからのCO2排出を大幅に引き下げなくてはならない。スイスの2017年の電源構成を見ると、アルプスの氷が溶けた水による水力発電が60%ほど、原子力発電が30%ほどで、石油火力が数%となっているが、太陽光や風力の比率は低い。だが、スイスは原発を近い将来全廃するという方針を示している。交通運輸、建物、工業分野からのCO2排出量を95%は引き下げないと、今回示された目標の達成は難しいとされる。水力発電を増やすと同時に、太陽・風力・地熱・バイオマスの利用を大幅に拡大する必要がある。さらに、暖房などに大量に使われている天然ガスも消費量を大幅に引き下げなくてはならない。その主流は、天然ガスが使われる分野を、効率の高い電気機器で代替することになるだろう。どうしても化石燃料が必要な分野も残るだろうが、交通運輸の電化も推進されるはずだ。米国でも具体化が進んでいる建物のオール電化は必然となるはずだが、スイスにとって難しいのは、CO2を出さない原発に代わるものを入手しなくてはならず、多分水力発電の増強が必要になる。しかし、地球温暖化によってアルプスの氷の量が減りつつあることにどう対応するかが課題になるかも知れない。

 いろいろ難しい条件がある中でスイスが2050年ゼロエミッション達成を宣言したのだが、日本はどう反応するのだろうか。

 

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■太陽光発電パネル無料設置

 太陽光発電パネルのコストが下がり、事業者がリースで設置して回収するビジネスモデルが拡大したり、蓄電池を使って建物全体の電力消費を賄う方法なども拡大しているが、今日の報道では、発電事業者が家庭や企業の屋根に無料で太陽光パネルを設置する代わりに、その電力を購入してもらうというビジネスモデルが広がっているということだ。国内でも、太陽光パネルで世界大手の韓国ハンファQセルズが9月にも事業を開始し、京セラと関西電力も今秋に参入する。家庭や企業は初期投資や保守管理が不要などの利点があり、企業でもSUBARU(スバル)などが導入を計画している。再生可能エネルギーの自家消費の拡大につながりそうだ。このモデルはパネルの利用者と所有者が異なるため「第三者所有モデル」と呼ばれる。日本では家庭や企業が太陽光でつくった電力の余剰分を一定の価格で一定期間買い取ってもらう制度(FIT)があるが、その期間がすぎるところも生まれ、買取価格もさがり、遠からずこの制度はなくなることになっている。一方、こうした優遇策を早期に廃止・縮小した米国では、住宅用の太陽光発電の6~7割が同モデルを採用しているとのデータがある。米国の事例では州によって事情が異なることには注意しなければならないが、全体としての市場が大きいことから、パネル価格の低下も大きい。

 日本でも制度の見直しも近くなり、第三者モデルを使ったパネル設置が増えると見込まれている。調査会社の富士経済によると、同モデルの国内市場規模は2018年度の12億円から、30年度には823億円に拡大見通しだ。設備は原則として10年後に顧客に無料で譲渡する。日本で太陽光パネルのシェア首位のハンファQセルズは9月にも一般住宅など向けにサービスを始める。京セラと関電の共同出資会社、京セラ関電エナジーも新築住宅など向けに太陽光パネルを設置し、10年間発電した電力を割安で販売した後、無料譲渡するサービスを始める。太陽光発電の不足分は関電が供給する。顧客が利用する電力の料金プランは通常の大手電力と比べ、年間で1万円前後割安になるという。家庭だけでなく、第三者所有モデルで太陽光パネルを導入しようとする企業も増えている。世界の投資市場で環境対策などに熱心な企業を評価する「ESG投資」が広がっていることも、太陽光パネルの導入意欲の向上につながりそうだ。この場合には、発電コストが下がったこともあるが、企業イメージを向上させようとする動機のほうが強いだろう。

家庭が自分で設置した場合には、蓄電するか、余剰発電分を買い取って貰う事業者を見つけなければならず、手間もかかるし、買取価格によってはコスト高になる可能性もある。第三者所有モデルは割安感や利便性をアピールしやすいが、きっちりした保守管理関連の契約をしておく必要はある。事業者としても一定の規模による競争力がなければ、収益確保が難しい面もある。どのビジネスモデルでも10年が一つの区切りになるだろうが、パネルのトラブルよりも付属電気設備のトラブルが問題として出てくるかもしれない。

 

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■家庭用燃料電池エネファームの巧妙な利用

 家庭用燃料電池エネファームは発電規模700ワット~750ワットで、排熱回収もして温水として利用するために総合効率は90%近くになる。これが最近新設集合住宅の場合全住居に取り付けられるケースが増えている。その利用の仕方について静岡ガスが、JR三島駅からほど近い12階建ての「シャリエ長泉グランマークス」で興味ある方式を始めている。全世帯に設置されている家庭用燃料電池エネファーム」の制御盤がIoTでつながっているが、この技術を活用し、日本で初めて電力の世帯間融通を実現した。マンションの電力を制御する計測器が、1分ごとに各家庭の電力使用量を計測している。自分のエネファームの発電能力以上に電力を使い、不足分は電力会社からの電力で補っている家庭を見つけた場合、全戸のエネファームの中でフル稼働していないものに発電を指示し、発電余力のある家庭が「電力不足」の家庭に電力を送る。売電した家庭は収入を得られる利点がある。

 このマンションは送電系統から一括受電しているから、その電気料金より安い電気がエネファームで作ることが出来れば、それを買う同じマンションの家族は電気料金を安くすることが出来る。そして、エネファームを自宅の需要以上に発電して、余剰分を同じマンション内で売ることができれば、燃料のガス料金が相対的に安ければ、収入となる。その仲介を静岡ガスがやっているのだ。このマンションの全世帯にスマートメーターが取り付けられているのが鍵を握っている。これによって、1分毎の電気消費量を測定できるため、マンション全体の電気消費量を最低になるようにエネファーム群を制御している。

 大阪ガスエネファーム・タイプSという発電効率の高いものを取り付けて、大阪ガスから電気を買っている場合、余剰電力を買い取っているのと良く似ている。マンション全体にこの方式を応用したようなもので、マンション全体の電力消費を大きく削減することができる。静岡ガスでは、マンション全体でCO2を30%程度削減できているとしている。今後同じマンションではなくとも、エネファーム同士をIoTで結ぶプロジェクトが各地で始まるのではないかと期待している。

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■欧米の陸上風力発電の余力膨大

 ヨーロッパの陸上風力拡大の可能性は、現在の100倍はあり、全量が開発されると2050年迄世界に電力を供給できるほどになるという。これは英国サセックス大学とデンマークオーフス大学の研究成果。この研究結果によると、ヨーロッパ大陸の陸上風力発電の設置がフルに進展すると、52.5TWに達し、2050年に世界が必要とする発電設備規模になる。また、ヨーロッパ市民16人に1MWが割り当てられる勘定になるという計算とも述べている。両大学の調査では欧州の陸上の46%が風況も良く、平地であり、風力発電に適している。500万平方キロの陸地に1,100万基の風力発電を建設すればこの結果が出るとしている。中でも、トルコ、ロシア、ノルウェー風力発電の開発余地が非常に大きいが、大陸西部も風況の良いところが多いために、開発余地が大きいようだ。いま洋上風力発電に業界は向かっているようだが、まだ陸上に適地が手つかずで残っていることが分かったという結論だ。

 一方米国のDOE(エネルギー省)が出したレポートでは、、風力発電のコストが急激に下がっているために、米国の陸上風力発電の設置がこれまでにない増加をしているとしている。昨年の設置規模は7,588MWで、大型陸上風力発電の総設置規模は96GWに達し、雇用量も114,000人になったとしている。この設置規模の拡大は今後も継続されると予想されていて、米国のエネルギーに占める再エネ比率拡大に大きな貢献をするとしている。州別に見ると、テキサス州が25GWとトップの位置を占め、カリフォルニア、アイオワ、カンサス、オクラホマ州が、それぞれ5GWを上回る設置規模を持っている。風力発電からの電力は、米国の総電力消費の6.5%を占め、14州では10%を超えるに至っている。アイオワ、カンサス、オクラホマ州では30%以上というから物凄い。技術進歩で大型化(一基2GWで、2003年の倍)も進み、各州の促進策も有効に機能して、発電コストも急速に下がっている。最近では補助策のない州も増えているようだ。さらに最近では小型の風力発電の普及も進展している。

 国土の大きさが違い、平地が少ないとはいえ、日本の設置量は2017年度末で僅か350万kW。2018年7月、日本のエネルギー政策に関する中長期的な基本方針「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定されたが、その冒頭に再エネはコストが高いという記述があることから分かるように、再エネを重視するふりをしながら、石炭火力や原発の推進をしている日本は、世界の動きに3周遅れになっているような気がする。

■東電、柏崎原発の一部廃炉方針

 東電がこの26日、東京電力ホールディングスの小早川智明社長は26日午前、柏崎刈羽原子力発電所新潟県)の立地先である柏崎市桜井雅浩市長と会談し、一部の廃炉を検討する方針を伝えたと広く報じられた。6、7号機の再稼働の実現後、5年以内に1~5号機から廃炉対象を選ぶということだが、小早川社長は「6、7号機が再稼働してから5年以内に廃炉も想定したステップを踏む」と伝えたようだから、廃炉が確定したとは言えないだろう。むしろ、目的は6,7号機の再稼働を推進しようとするための餌にするような方針だと感じた。桜井市長は2017年6月に6、7号機の再稼働を認める前提として、1~5号機の廃炉計画を2年以内に提出するよう東電側に求めた。19年6月が期限だったが、回答が遅れていた。再稼働には新潟県の同意も必要となるが、花角英世知事は県独自の検証を終えるまでは議論ができないとの姿勢を示している。検証作業が終わる見通しは立っておらず、6、7号機の今後の道筋は不透明のまま。

 報道によれば、6、7号機は17年12月に国の安全審査に合格したものの、再稼働のめどは立っていない。東電は早ければ21年度の再稼働を目指している。できる限り早く、地元の理解を得て安全対策工事を本格化させたい構えだ。6号機の営業運転開始は1996年11月 で電気出力 135.6万kW。7号機は営業運転開始 1997年7月で電気出力 135.6万kW。ほぼ同時期に運転を開始したもので、原則40年で廃炉とされる年数にはかなり年数を残してはいる。従って、いずれどこかの時点で、新潟県柏崎市を説得して稼働させることになるのだろうが、再稼働すれば使用済み核燃料の必要保存量が増えることになる。その処理方法として再処理が国の方針だが、その再処理工場がほとんど稼働しておらず、その処理の方向は曖昧なままだ。また、再処理をしても放射性廃棄物の処理方法も見通しが立って居らず、その現状で再稼働の推進をするのは、日本のエネルギー政策に大きな禍根を残すことになることは間違いない。少なくとも使用済み核燃料の処理技術と放射性廃棄物処理の方向だけでも決めるべきだと思う。