効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■再エネによる水素製造

 これから水素社会になることが政策目標になっているが、その鍵を握るのはその製造コスト、特に、再生可能エネルギーからの電力を使って水を電気分解するコストが、どれほど安くなるかだということは確かだ。エネルギーリサーチ会社Bloombergの出したレポートでは、2030年迄に80%のコストダウンがあるという。それを推進する力は、カーボンの排出を抑制しようとする企業の施策だとしている。最近多くの企業が、事業政策の中にESGなど環境対応を示しているところが急増しているのがその証左かも知れない。これまでカーボンフリーの水素の製造は量的に多くはなかったためにコスト高にならざるを得なかったのだが、市場環境が大きく変化してきた。特に、これまでも水素を製造工程で大量に消費していた企業がカーボンを排出しない水素の利用を課題にするようになったことが効果を上げるようになったのだ。これには水素の製造だけでなく、貯蔵、輸送のコストも大きく関係する。

 同社の予測では、2030年迄に、現在キログラム当たり2.50ドル~6.80ドルのものが、1.40ドルに下がるとしている。これがさらに2050年には80セントにまで下がると予測している。この価格は、天然ガス100万BTUあたり6ドルに相当しする。この価格はこの水曜日のニューヨーク市場での価格が100万BTUあたり2.17ドルであったし、2014年には7ドルを超える価格で取引されていた。水の電気分解で水素を製造するコストが安くなるのがそのコストダウンの中心で、2030年迄に24ドル/MWh、2050年には15ドル/MWhになると想定している。この実現には政策的な推進策が不可欠なのは当然だろう。IEAによると現在水電解は3GWのものが実証試験されているが、ここ数十年の間に需要さえ拡大すればこの規模は千倍に伸びるとしている。

 この水電解市場の拡大の主力は中国。殆どが国内市場向けで、一部が西欧、オーストラリア、米国に輸出される。Bloombergの予想では、2030年迄にこの輸入国も中国の安い水素価格に追いつくとのことだ。これから2030年迄は、ノンカーボン水素の需要は漸増するが、その後の20年で需要は急増し、2050年迄に2億7千500万トン/年に達すると予測している。この予測の中には日本が市場として想定されていないのだが、日本についてはまた別のレポートを探してみることにする。

 

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■米国の洋上風力発電事業に向かい風

 米国マサチュセッツ州で米国最初の洋上風力発電所Vineyard Windが間もなく建設に入るとされていたのが、トランプ政権の洋上風力に関連する規制の強化によって大幅な遅れ、あるいは中止に追い込まれる可能性もあると報じられている。この風力発電所は2023年迄に320万キロワットの規模になり、マサチュセッツ州内で消費される電録の20%を賄うはずだった。だが、トランプ政権は、洋上風力設備の建設に関するこれまでの調査を全部見直すとし、今年であれば建設に関する税控除が得られるはずだったのが、ご破算になり、事業的にも見直さざるを得なくなっているという。その一方でトランプ政権は、石炭、石油の資源開発を巡る規制を大きく緩和し、石炭火力発電所の排ガス処理に関する規制も大きく緩める方向に向かっている。

 マサチュセッツ州はこれまで差地球温暖化防止に関わる規制を強化し、再エネの導入拡大に力を入れていたため、温暖化防止組織との対立も避けられなくなっている。同封力発電設備は、海岸から15マイル(24キロ)沖合にあるが、設備の間隔は漁船の安全運航に支障がないようにするということで0.8マイル(1.3キロ)の間隔で設置することに決まっていたが、トランプ政権は1マイル以上にしなければ認可しないとしている。これまで積み上げられた調査データや委員会の議論も全部最初からやり直さざるを得なくなっている。

 この風力発電所は、米国の洋上風力発電所の今後を象徴するものとして早期の着工が期待されてきたが、最初は住民からの反対もあり、計画は遅れていた。今回の後ろ向きの規制が実施されれば、現在全米で進行中の洋上風力発電建設計画は大きく後退することになることは確かだろう。州当局は、この発電所が建設されれば大きな雇用を生み出すと期待していたようだが、トランプ氏は、再エネ事業は化石燃料産業から雇用を奪うものだとして計画の進行を阻止する方向に向かっている。これからどのような展開になるか分からないが、日本にも関係することだけに注視していかなくてはなるまい。

 

 

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■JR西日本、初のゼロ・エネ駅実現へ

昨日書いた英国の鉄道の太陽光発電プロジェクトに似通っているが、JR西日本は同社として初めて、山陰本線東浜駅鳥取県岩美郡岩美町)において「ゼロ・エネルギー・ステーション」を実現するとともに、微生物や振動などの自然環境から得られる微弱な電気を活用した「環境発電」に挑戦すると発表した。駅舎の近くに太陽光発電設備(13kW)と蓄電池(22kWh)を設置し、電力を供給する。これにより、東浜駅で使用する顧客設備に係る電力(20kWh/日)をすべて賄う予定だという。「ゼロ・エネルギー・ステーション」は他のJR路線では実施していないのだろうか。そのつもりになればもっと早く実現できたはずだ。東浜駅無人駅。山陰線は京都駅 - 城崎温泉駅間、伯耆大山駅 - 西出雲駅間(直流1500V)が電化されているが、そこを走る列車もディーゼル駆動が多い。東浜駅も無電化区間だから、太陽光発電で余剰電力が発生すると蓄電するか、一般の送電系統に売電するかしかできない。しかし、余剰電力を系統経由で他の駅に送ることは現在の制度でもできるのだから、蓄電の必然性はない。発想が旧来の方式にとらわれすぎているようだ。

民間の電車路線の駅には全て屋根が着いているはず。その面積は合わせるとドーム球場の広さを超えるのではないだろうか。この屋根にパネルを設置できるように駅舎の屋根を補強するコストは必要かも知れないが、パネルのコストは大きく下がっているから、そこで発電した電力を路線全体で利用できれば、電力会社から電気を購入する量を大きく引き下げることができるはずだ。以前にこの方式を鉄道関係者に推奨したが、いかに難しいかということばかり言って、全く耳を貸そうとしなかったこともある。それが今になってゼロエネルギー・ステーションなどと言い出すのは、単に社会の認識が変化したのに対応したに過ぎず、格別のことではないように思う。

もしそのつもりになれば、駅舎の屋根だけではなく、路線の傍の空間にパネルを設置すれば、電車を走らせる電力の一部も賄えるだけの発電量は得られるだろう。夜は発電しないからその対応はしなくてはならないが、夜間電力を安く購入できれば、電力事業の収益性を上げる一つの手法になる可能性を秘めていると思うが、鉄道関係者はどう考えているのだろうか。

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■太陽光発電からの電力で走る列車

 今日Eメールで受け取った英国のGuardian紙が報じているが、ハンプシャー地域を走るネットワーク・ライン社のWessexディーゼル路線を全面的に太陽光発電からの電力で賄う計画を開始したという。最初の試みとして、30kWのパネルを線路脇の空き地に設置し、それを電力系統に接続せずに直接信号に必要な電力を供給する方式を開始している。駅舎については既に太陽光発電の利用は行われているが、路線を走る列車の電力も近い将来直接供給するとのことだ。

 送電系統にまず接続するのであれば、列車が走るときに起きる需要変動に対応するのは難しい話ではないが、直接電力を路線に供給するとすれば、必ず蓄電装置が必要となるはずだ。しかも、現在ディーゼル路線だから、それを電化するのに必要な架空線を設置しなければならず、その支柱を立てる必要もあり、当初の設備コストは膨大なものとなると想定される。路線の長さにもよるのだろうが、この記事によれば、太陽光発電のコストが大幅に下がったことによって電化が可能となり、総コストは少なくなるとしている。その真偽は分からないが、これは世界で初めてのことだとしているから、何か巧妙な仕掛けがあるのかもしれない。英国政府の技術開発資金も利用しているようだから、いい加減なプロジェクトではないはずだ。将来英国の路線全体をこの方式にすることを目指しているそうだから、技術的な背景などを調べれば、日本にも取り入れるものがあるかもしれない。

 以前、燃料電池駆動の列車がドイツで昨年秋に走行を開始し、英国でもその方式を採用するというニュースが流れていたが、これとの関係もどのようないなるのだろうか。

 

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■シンガポールが水没しないように

 シンガポールは小さな島国で、水源がない。そのため、隣のマレーシアから太い水道管経由で水を輸入している。これはシンガポールとマレーシアが政治的な対立になると、この水を止めると言われると対応のしようがないほどのリスクを常にはらんでいる。エネルギーも海外依存。以前はマレーシアから輸入していたが、確かインドネシアとパイプラインで結んで輸入しようと計画してマレーシアの反対に遭って実現しなかったこともある。都市を維持するのに不可欠なものを全て外部依存していることになる。

 そのシンガポールがこれとは異なった水の問題に直面している。小高い山もない平坦な島だから、海からの水害の危険に耐えずさらされている。建物も平均海水面より済むなくとも3メートル高い基礎の上に立てることを義務づけられてきたが、最近の地球温暖化の進展による海水面の上昇のために、3メートルでは水没する可能性が高くなっているという。そのためシンガポールは海岸に堤防を築いて水没を防ごうとしているが、720億ドルものコストがかかるとしている。

 シンガポールチャンギ国際空港はいま第5ターミナルを建設しようとしているが、海水面より5メートル高いところに滑走路を作らなければならないらしい。当局は、その位置が赤道との距離が短いからだとしている。シンガポールが学ぼうとしているのは海水面より低いオランダが国を守る堤防の建設をして維持管理してきた経験だそうだ。

 これから見ると、日本は赤道からの距離はシンガポールよりも遠いが、大都市部は殆どが元々入江であったり湿地であったところが多いから、海面上昇の影響を受ける度合は高まっているはずだが、台風による河川の増水に起因する水害ばかりに目が行っていて、あまり災害の要因として語られないのは問題だろう。最近の気候変動の激化を経験しながら思っていることだ。

 

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■トランプ大統領のグリーンランド購入希望

 米国のトランプ大統領が、デンマーク自治領であるグリーンランドを購入したい意向を示したというニュースを見て、その背景となる理由がよく分からなかった。だが、ファイナンシャル・タイムズが報じたように、戦略素材の確保がその理由だが、表現がトランプ独特の商売人的発言になったらしい。グリーランドには戦略的に重要な鉱物資源であるレアアース(希土類)が豊富に埋蔵されている。グリーンランドレアアースの埋蔵量は3850万トンにのぼると推定されているが、グリーンランドを除いた世界の総埋蔵量は1億2000万トンだから、かなり大きな比率を占めている。同様に埋蔵量が多い中国が、その輸出規制をほのめかしたことが背景にある。米中対峙の一つの表れだと言える。それにしても他国の領土を買うという発想には驚かされる。過去には1867年(日本では明治元年)10月18日に、アラスカがロシア帝国からアメリカへ売却されたということもあるから、トランプ大統領にとっては一つの駆け引きでそれほど重要なことだとは思わなかったのかも知れない。

 レアアースに関しては、中国の埋蔵量が多いだけでなく、その加工技術でも他の追随を許していないことも重要だろう。グリーンランドでのレアアース埋蔵量は多いが、それを採掘しても最終製品に持っていくときの技術が必要で、グリーンランドにある企業2社がどれほどのレベルの技術を持っているかについてはいろいろな見方があり、中国依存は避けられないとする考え方もある。トランプ氏は中国がこの技術提供をすることで、米国にとって不利となる支配力を発揮するのを回避したかったのだろう。しかし、その原因となる米中対立を生み出したのは彼だから、これからグリーンランドを本当に入手しようと動くのかどうかも注意して眺める必要があるかもしれない。最終製品に持っていく技術を米国が持っていない可能性もあるからだ。

 今入ったニュースを見ると、トランプ米大統領20日、9月初めに予定していたデンマークのフレデリクセン首相との首脳会談を延期するとツイッターで発表したということだ。米メディアによると、訪問自体を中止。一体彼は何を考えているのだろうか。

 

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■気候危機

 米海洋大気局(NOAA)は15日、世界の7月の平均気温が20世紀平均を0.95度上回り過去最高だったと発表している。6月も過去最も暑かったが、2カ月連続の更新となる。過去5年間の7月の気温はいずれも上位5位以内で、1880年の観測開始以来、気温の上昇傾向は加速している。7月末にはフランスや英国、ドイツなど欧州各地で過去最高気温を更新した。パリでは7月25日、セ氏42.6度と72年ぶりの記録となった。昨年7~8月のパリは平均最高気温が約25~26度で、冷房がない家庭も多い。

 自分が1085年から4年間ロンドンに駐在したときに、最初のオフィスには冷房がなかった。また、車に冷房がついていないのかと現地の人に尋ねると、車に冷房を付けるのは日本人か中東諸国からの人だけだと笑われたのを思い出す。逆にセントラルヒーティングは当然で、赴任した夏に短期滞在したホテルで暖房が入っていたのに驚嘆したこともある。イタリアやスペインは別にして、欧州諸国で冷房は必需ではなかったし、今でもその筈だから、この記録的猛暑は脅威だっただろう。

 熱波は大部分が北極圏に位置するグリーンランドデンマーク)にも及ぶ。8月1日の一日だけで125億トンの氷河が解け、一日の融解量として過去最大となった。米メディアによると、6~7月に解けた氷は2400億トンに達し、海面の上昇は避けられない。7月の北極圏の海氷面積は平均より約2割小さく、過去最小となった。温暖化の影響は暑さだけではない。国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は8日公表の報告書で、50年に穀物価格が最大23%上昇する恐れがあるとする試算を示している。干ばつや洪水が増えて農業の収率が下がり、食料の安定供給に影響が出ると指摘したとのこと。

 このような状況にある中で、トランプ米国大統領は、風力発電は社会悪だと非難している。景観を悪くするし、土地の価格も下がる。騒音で人が住めなくなるし、鳥も殺され、電気料金も上がるなど、社会にとって迷惑な存在だと口を極めて非難していると報じられている。タービンが破壊して子どもが怪我をするなどとまで言ったという。これを支持する人も居るのだろうが、最近急速に増えている自然災害に、彼はどのような理屈を付けるのだろうか。

 

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