効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■世界のCO2排出量最高

報道記事の丸写しだが、2018年のエネルギー消費に伴う世界の二酸化炭素(CO2)排出量が2年続けて過去最高になったことが、国際エネルギー機関(IEA)が26日発表した報告で示されている。再生可能エネルギーは伸びたが、経済成長で化石燃料の需要が新興国を中心に増え、排出増を招いた。18年のCO2排出量は331億4300万トンと前年比1.7%増え、13年以来5年ぶりの高い伸び率だった。増加分の約3分の2を発電分野が占め、とりわけCO2の排出量が多い石炭火力発電がアジアで伸びたことが押し上げたということだ。CO2排出量を国・地域別にみると、全体の3割弱を中国が占め、米国は寒波で石炭の暖房需要が膨らみ、3.1%増えた。一方、再生エネ移行が進む欧州では1.3%減り、日本は原子力発電所の再稼働も寄与して減少が続いたという。18年の世界のエネルギー需要は石油換算で143億100万トンと、前年比2.3%増えた。風力や太陽光といった再生エネは4%増え、世界の需要増の4分の1を賄った。石油は1.3%、石炭は0.7%それぞれ伸び、CO2排出増につながった。石炭からの移行が進む天然ガスは4.6%増と、10年以来の高い伸び率を記録した。

この報告書を出したIEAのトップがこの1月から日本人が担っている。日本人としては24年ぶりで、しかもエネルギーの専門家ではなく外交畑出身の大江 博さん。外交官であった経験は、これからのエネルギー市場に影響力を増した米国や中国の対立関係を深める方向に向かっているだけに貴重な存在となるかも知れない。米国は原油の生産量で世界1になったことを交渉力の足場にして、ロシアが欧州へ天然ガスを供給するのを批判する姿勢を強めるだろう。トランプ大統領の極めて身勝手な判断に基づくものだが、IEAにもその影響は強く及び、報告書もフェイクだというかも知れない。それをうまく裁いて、IEAの中立的な判断を強化してほしいものだ。

■関電、特高変電所数の削減

関西電力は関西エリアにある配電用の変電所を10年間で10カ所程度減らし、変電所内の変圧器も減らしてメンテナンスにかかるコストを抑えるとのことだ。同社は「特高」と呼ぶ高い電圧を下げる変電所を管内に約800カ所持っているが、高度経済成長期に完成して老朽化したり、想定よりも活用されなかったりした変電所から10カ所を減らすとしている。800の内10だから格別のことではないということではないだろう。需要サイドに自ら自由に出力制御ができない発電設備が増えてきたことから、送電系統の制御自体を基本的に見直す必要があるのだが、その一環として老朽化したものから始めていくと言うことだろう。

変電所を一つ無くするだけでも、そこの低圧側に何本も繋がっている送電網自体の制御も変更しなくてはならない。需要側に電源が増えてくると、これまでは変電所から需要側に向かってだけ電気は流れるという前提で系統の組み合わせや制御も行われてきた。しかし、これまでとは逆に電気が流れる可能性が大きくなっている現在、逆潮するとリレーが働いて切ってしまうとする従来型の制御では、今後の電力供給の姿を作り出すことは出来ない。だから、発表では10カ所というだけになっているが、それぞれの下流、あるいは、隣接する変電所の制御システムも大幅に変更するはずだ。それがあって始めて、理由の一つに挙げられている再エネ導入量の拡大も実現できるのだと思う。変電所を減らしたことによるコスト削減を、複数の発電施設を一つの発電所のように管理する「仮想発電所(VPP)」に関連する分野へ振り向けるという付け足しのような発表が本質的な変電所に手を入れる理由だろう。削減される10の変電所がどこにあるかを調べることができれば良いのだが。

■再生エネ100%での電鉄事業

東京急行電鉄は25日、水力発電などの再生可能エネルギー100%による東急世田谷線の運行を始めたということだ。東京都世田谷区東部の約5キロ、10駅を結んでいる路面電車。都市型鉄道では国内初の試みだということだが、他の形態での事例はあるのだろうか。欧州では風力発電の電力だけを利用した鉄道の事例はあると聞いたことがある。今回の世田谷線では、東北電力水力発電地熱発電による再生エネルギーを供給するらしい。電力の託送で東北から関東に電気を送るのだが、世田谷線の消費する電力が小さければ、過不足の問題はなくなる。特に水力、地熱といった時間帯での変動はない電源からだから同時同量の問題も起きないだろう。世田谷線は平成30年度の電力使用見込みが215万キロワット時で、東北電からその分の電力を購入し、本線、車庫内などの電車運行に活用していくと報じられている。これが風力や太陽光発電の電力を利用するということであれば、発電量が不足した場合には、他の地域での再エネによる発電の環境価値を証書として購入する方式も併用しなければならないだろう。

鉄道の場合、駅舎の電力を再エネで賄うということも考えられるが、短い路線を運用する事業であれば、工夫すれば東急電鉄のように企業イメージを大きく訴求できる路線電力の再エネ化ということはそれほど難しいことでは無いかもしれない。ただ電車路線が消費する電力は時間帯で大きく変動するから、それへの対応をどうするかの工夫が必要だろう。あるいは、全量にはならないが、再エネ比率を高めることで企業姿勢を示す方式もありうるだろう。

今日午後、地域で再エネの定着拡大を進めようとしているグループ、地域未来エネルギーなら、の理事会があった。顧問を仰せつかっているので出席。森林の多い奈良だが、バイオマスを燃料とする再エネプロジェクトの定着は非常に難しいことを実感。太陽光発電も固定価格の買い取り価格が下がり、これまでと違った発想が求められている。小さな組織だが、参加メンバーの熱意には心を打たれる。

■レストランチェーンでの燃料電池利用

業務用の固体酸化物型燃料電池SOFC)で商品化されたものの中ではもっとも規模の小さい京セラ製の3kWが、幾つかのレストランチェーンで利用され、効率の高さが認識されているようだ。すかいらーくホールディングスは3月18日、同社が運営するバーミヤンの東京都内5店舗に、新たに業務用燃料電池(発電出力3kW)を導入すると発表している。これは昨年度第9次の政府補助金の対象になったものだろう。24時間定格運転で稼働し、熱は厨房機器、電気は店内照明等に利用している。都内では初の設置になったようでだが、すでに導入している静岡県内の4店舗では、これによりCO2排出量が未導入店舗に比べ、約5~7%削減されている。稼働状況を確認した上での追加導入だから、今後も設置数は増えるのだろう。

このユニットの発電効率は52%、排熱利用(給湯)も含めた総合効率は90%を超え、今後価格も下がっていくからレストランチェーン一般に、標準設備になるかもしれない。他のレストランチェーンでも導入されているが、停電時には配電系統とは独立した運転もできるため、照明などを止めないで済む。関心が高まっている非常時対応としても期待されているだろう。京セラの3kWユニットは、中核部が家庭用700Wのエネファームと同じだから、信頼性の面でも評価されているのだと思う。給湯負荷の大きいお店には最適の自家発として普及することを期待したい。

■水素の燃料電池向け大量生産

これまで水素は合成化学用、あるいは、高炉の副産物として生産されていたが、燃料電池の燃料としては利用されていなかった。それが、2010年の東京オリンピックを機に大量導入される燃料電池バスなどに向けた燃料供給を目的とする水素生産設備が、東電と中部電力の合弁であるJERAが石油関連事業のJXTGとともに天然ガスから大量に水素を製造する設備を建設することになった。東電の大井火力発電所(現在停止中)構内に建設されるが、2020年6月から稼働を開始するようだ。水素供給能力は毎時600N立方メートルで世界最大級の設備になるという。1時間あたり10台の燃料電池車(FCV)に充填でき、FCVやバス、輸送用のタンクローリーに水素を供給する。

水を再エネ発電設備からの電力で水を電気分解する方式でも水素を製造でき、小規模のものは実用化されているが、大規模なものはまたコストが合わない。この方式については、福島県浪江町NEDOが大規模な1万キロワット規模の設備を2020年から実証テストに入るが、これがコストダウンのきっかけを作るかも知れない。ドイツなどでは再エネ発電からの余剰電力を蓄電する方式として普及させようとし始めている。これから水素がエネルギー源として重要視される時代がすぐ近くにまで来ていると言えるだろう。

■豊田自動織機、フォークリフト用水素の製造

豊田自動織機は、再生可能エネルギーである太陽光による電力のみで水素を製造し、燃料電池フォークリフトに供給する再エネ水素充填所「H2PLAZA」を高浜工場内に設置し、報道陣に公開したということだ。工場に設けた出力約190キロワットの太陽光パネルで発電した電力で、水を電気分解し水素を作る。1時間当たり10N立方メートル(ノルマルリューベ=標準状態での気体の体積)の水素が製造できる。FCフォークリフト1台を約3分で充填でき、1日に最大14台充填できる。

「H2PLAZA」は、水素の製造、圧縮、貯蔵、及び充填の各機能を備えた施設で、愛知県制定の「低炭素水素認証制度」に基づいた低炭素水素製造計画として、トヨタ自動車元町工場、中部国際空港でのプロジェクトに続く、3例目の認定を受けている。同社は、2020年までに、高浜工場にCO2ゼロのモデルラインを設置、稼働させることを目標に掲げており、この「H2PLAZA」を中心としたFCフォークリフトの運用も施策の一環だとしている。天候の影響で太陽光パネルの出力が低下したときに備え、東邦ガスが都市ガスから製造した水素も貯留するということだが、190キロワットのパネルではそんな心配もあるのかという感じもする。東邦ガスが水素を外販しているということも初めて知った。天然ガスから水素を作るのは、石油から作るよりも炭酸ガスの排出が少ないからだろうが、同じやるなら太陽光だけで稼働させるような方策を講じてほしかった。

 

■大手電力事業が再エネ発電に参入

東北電力20日に発表しているが、レノバが開発を主導する「秋田県由利本荘市沖洋上風力発電事業」の開発可能性調査(Feasibility Study)に参画することになったようだ。この風力発電規模は全体で70万キロワット。国内では最大級のものとなる。これまで大手電力事業は、再エネ発電が系統に接続されるのに積極的ではなかったが、一般消費者や企業の再エネへの関心が高まり、それに関わる企業を高く評価するようになってきたためだろうが、最近次第に取り込みを図ろうとしている。東京電力ホールディングス(HD)と新電力のイーレックスがこの4月、再生可能エネルギーの電力を中心に販売する新会社を共同で設立するというのも同じ方向だ。両社が水力やバイオマス発電などの電力を拠出し、環境意識の高い企業向けに販売する。

東北電力が参画する事業は、現時点では2021年度の着工、2024年度以降の運転開始を予定している。洋上風力でも3年で稼働できるのだから、採算性が高ければ事業としての魅力は大きくなるはずだ。また、電力事業が参画すれば、送電系統の現況を良く把握しているから、実際に事業を手がけるところも安心だろう。地元への影響力も大きいから、海上関連の関係者へのアプローチもやりやすくなる。東北電力は、東北・新潟エリアを中心に200万kWの開発を目指すとしているが、賦存量はもっと大きいはずだから、さらなる努力をしてほしいものだ。